Outline of Annual Research Achievements |
コミュニケーションカの育成を目指す英語教育において, インプット(聞く・読む)は欠かせないとされている。しかし, 公立中学校の英語授業においては, インプットの重要性は見落とされがちである。そこで本研究では, 多読を取り入れてインプットの補充を図ると同時に, ヴィゴツキーの社会文化的理論を応用し, 読んだ本の中で気に入った本を仲間に紹介するBook TalkやBook Tree Projectという活動を取り入れ, アウトプット(話す・書く)の向上を図った。その結果, 4技能すべてにおいて向上が見られ, 特にスピーキングテストとリーディングテストにおいて, 統計的差異が確認できる成果が見られた。 具体的には, 週4時間の英語の授業のうち1時間を多読の時間にあて, 生徒が各自選んだ本を読み, その中で気に入った本についてクラスメイトと英語で語り合うBook Talkを行った。また, 月に一度, お薦めの本の紹介を30語程度の英語で木の葉型の用紙に書き, 本の難易度レベルやシリーズを図式化したポスターに掲示していった。また, 通常の授業ではBook Talkを円滑に進めるための対話ストラテジーの教授を段階的に行うと同時に, 対話活動を中心とした文法や語彙指導を行った。 抽出生徒におけるインタビュー調査では, 与えられた文章ではなく, 自分で選んだ原書を読むことにより楽しく学習ができた, 長文に対する抵抗感がなくなったなどの心理面における多読の効果が見られる感想が多かった。それと同時に, Book Talk等のアウトプット活動と融合させることにより, どのように物語を紹介したらよいかキーワードを探しながら読むことができた, 仲間の読んでいる本を読んでみたくなったなど, 読み方の質と多読への意欲の向上が確認できた。 これにより, 中学校のような英語学習初期段階においても多読はコミュニケーションカの育成のために重要であり, また確かな英語力の育成のためにアウトプット活動と融合させることが必要であることがわかった。
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