Outline of Annual Research Achievements |
本研究は, 物語の読み聞かせとアニメーションによる映像体験とを比較し, 読み聞かせにおいて, 児童がどのように物語の世界を創り出しているのかを探ることを目的としている。これは, 読み聞かせの教育的効果を探ることに寄与するものである。 そこで, 小学校4年生から6年生各60名の児童を対象とし, 次の方法によって検証することとした。 ① 読み聞かせ, 映像体験それぞれのグループに分け, 児童の反応をVTRに記録し, その表情の変化やつぶやきを抽出し分析する。 ② 物語の再話を行わせ, あらすじ理解を探るとともに, 登場人物の人物像や物語の感想を記述させ, 比較する。 これらの調査から, 次のことが確認できた。まず, あらすじについての記述を見ると, 映像体験のグループでは端的に表現される傾向にあるのに対し, 読み聞かせでは, 自分の解釈を基に補いながらの再現や印象的な場面の記述が多いものが出現する傾向が見られた。また, 映像体験ではインパクトのある映像で一斉に反応する傾向があるのに対し, 読み聞かせでは, 話の展開の中での反応場面に広がりが見られた。さらに, 感想の記述を見ると, 映像体験ではストーリーの展開が話題になっているのに対し, 読み聞かせでは, 自分自身の体験やこれまでの読書体験を加えた記述, 中心人物以外の記述の出現率も高くなった。しかし, 映像体験にはない無記入も見られた。事後の対話では, 互いの解釈を出し合い, 言葉をもとに人物像を確かめるような発話が読み聞かせで多く見られた。 このことから, 読み聞かせでは, 映像体験と比べ, 自分自身に引きつけながら聞いたり, 言語生活で得た物語スキーマを発動しながら文脈の意味付けしようとしたりする傾向が強まることが確認できた。今後らに調査を進め, どのように情報の関連付けを行っているのかを明確に探る必要があると考える。
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