Outline of Annual Research Achievements |
本研究は, 中学校あるいは高等学校の数学の授業において, 学習者の数学的経験が, その学習者が数学的方法を活用しようとする態度にどのように影響し得るのかを明らかにすることを目的とし, 指導論の構築へ向けた示唆を得ることを試みた. 特に本研究では, 計量言語学という統計的手法で, 数学的態度の定量的評価を試みた. 具体的には, 数学的態度は, 学習者によって産出される発話や記述における共起表現(ある語句が他のどんな語句と同時に使用される傾向にあるか)によって一定程度特徴付け得る. 本研究の成果は, 主として次の6つである. 1. 予備的な調査で, 数学的概念の形成過程の新しい一側面を発見した. 2. 予備的な調査で, 学習者を演繹的推論へと移行させる指導アプローチについて示唆を得た. 3. 計量言語学的分析を通じて, 次の2つの結果を得た. (1)先行研究における指導アプローチの理論的前提が高等学校段階でも充足し得る. (2)先行研究からは必ずしも予見できなかった学習者の一面も見られ, この指導アプローチを高等学校段階で広く活用する上で課題も見られた. 4. 計量言語学的分析を通じて, 次の男女差を明らかにした. 指導対象の定理の一般性が高まることに合わせて, 女子は原理や規則に注目する傾向性が増し, プラグマティックな観点から離れていく様子が伺えたが, 男子は, 元の問題解決を重視し, 指導対象の一般性を問わず, 一貫した評価を行う様子が伺えた. 5. 数学的方法を活用させる授業における注意点として, 対象となる数学的方法が, 個別の数学的内容に依存しているかどうかに依存して, 教師のあるべき振る舞いが変化すると示唆された. 6. 数学的態度の一種として間接証明法を活用する様子に着目して, 授業実践を実施し, 教師が設定すべき授業状況について示唆を得た.
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