Outline of Annual Research Achievements |
1 研究目的 コンピテンシーの育成を目指した算数科における授業の在り方について提案し, その有効性を実践的に検討することを目的とする。 2 研究方法 研究目的を達成するために, 大正時代から貫いてきた奈良女子高等師範学校附属小学校での清水甚吾の「算術自発学習指導法」における実践を資料とし, 次のような方法で研究を行った。 (1) 清水が「算術自発学習指導法」を確立していった大正9年~大正15年の約7年間に焦点を当て, 「算術自発学習指導法」から見出した算術教育の在り方を, 算数科におけるコンピテンシーベースの授業という視点で考察していく。 (2) コンピテンシーの育成に関する実践的研究について, 先進校視察, 文献研究を行う。 (3) 上記の(1)(2)から構築した理論を基に, 授業実践を行いその有効性を検討する。 3 研究成果 清水の実践から方法論成立のために必要な視点を次の5つに整理した。 (1) 方法, 目標, 内容の一体化を図ること。(2)社会との交渉をもたせ, 学びを算数科だけに閉じないこと。(3)系統を把握し学びの発展性を図ること。(4)個の学び, 相互の学び, 個の学びという学習形態の工夫を図ること。(5)算数科の内容や方法にコンピテンシーを埋め込むこと。 本研究において, 清水の算術教育観を明らかにした上で, 「算術自発学習指導法」について整理し今求められているコンピテンシーベースの教育という視点で再整理できたことは, 100年という時代の流れの中で, 往々にして「内容(知識・技能)」の習得が最終的な目的になっていた現代の算数教育に対しての示唆を得る上で大きな意味をもつものであったと考える。さらに, 方法論成立のために必要な5つの視点を踏まえた第6学年の算数科「資料の調べ方」の授業を提案し, その視点の有効性を認めることができたことも成果と考える。
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