Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生徒主体の授業展開となる理科の探究的な学習におけるアセスメントに注目した。探究的な学習は、生徒主体の活動となるため授業展開が予測しにくい。そこで教師には授業における形成的アセスメントの結果に応じて、適切なフィードバックを行うことが求められる。本研究では、David & Debra(2007)の良いフィードバックを行うための7原則を援用し、探究的なアセスメントについて考察した。モデルとして開発した探究的な学習カリキュラムの実践分析では、活発な探究活動が行われ、教師のアセスメントにDavid & Debra(2007)の指摘する7原則が網羅されていた。このときの教師のフィードバック行動について、事例としてまとめた。しかし、観点別にみると「自己評価の反映を促す」内容と「パフォーマンスギャップを埋められる機会を提供する」内容が少ない状況が認められた。探究的な学習を指導する教員へのアンケート調査では「自己評価の反映を促す」内容や「手助けとなる情報の入手」を支援する内容、「教師と仲間の対話を促す」内容が少ない状況が認められた。また各要素の出現頻度は「課題研究に対する生徒の寄与の割合」と関連しており、教師がどの程度探究的な学習を主導するかによって行われたアセスメントに差異が認められた。 次に、これまでの事例を参考に探究的な学習のモデルを構築した。モデルは「教師による課題と情報の提示」、「生徒がグループ毎に行う実験, 観察, 考察」、「課題についての作業結果の表現」、「表現した内容のクラス全体での共有と調整」の4場面からなり, 4場面の繰り返しによって授業を組み立てる構造であった。モデルでは授業におけるアセスメントの重要な要素となる教師と生徒の対話に着目し、理科の資質・能力の育成をねらう探究的な学習の実現をTaylorらの「構成主義に基づく学習環境の五つの鍵となる要素」の発現によって確認した。このモデルで探究的な学習をデザインし、適切なアセスメントによるフィードバックを具現化することで、理科の資質・能力の育成に有効な授業を実践できる可能性のあることを確認した。そして指導案を例示した実践事例集の開発を行った。
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