Outline of Annual Research Achievements |
本研究は, Hattie, J., Timperley, H.(2007)が指摘したフィードバック機能を軸にReeve, Rら(2009)が指摘した自律性支援的指導指導行動を援用した足場づくりと足場はずしの理科授業デザインを構想し有用性を検証した。 フィードバック機能とは, 問題を明確にするタスクレベル, 問題解決の見通しを明確にするプロセスレベル, 自己調整を促す自己調整レベル, 学習の動機づけに対して機能する自己レベルである。一方, 自律性支援的指導行動とは, ①聞くこと。②子どもの欲求を尋ねること。③個別活動の時間を取ること。④子どもの話し合いの促進。⑤理由を与えること。⑥情報的フィードバックとしてほめること。⑦励ますこと。⑧ヒントを与えること。⑨応答的であること。⑩視点を与える言葉である。 分析対象とした授業では, 教師が足場づくりとして, 形成的アセスメントを実施して学習状況を把握し(①②), 必要に応じて問題解決の見通しを明確にするための理由やヒント, 視点を与えた(⑤⑧⑩)。同時に, 子どものパフォーマンスを承認して動機づけに働きかけ(⑥⑦⑨), 子どもが自ら思考・表現できる場を確保した(③④)。一方, 子どもがフィードバック機能を内面化しながら学習に対する動機づけを高め, 自覚的にその機能を駆動させて問題解決を実行するようになると, 教師は自律性支援的指導行動を徐々に減らす足場はずしを実施して, 学びの主体を子どもに譲渡しながら自律的な学びを促した。このような足場づくりから足場はずしを経て, 子どもは, 問題解決プロセスの中で徐々にフィードバック機能を自覚的に駆動できるようになった。結果として, 学習の主体としての自律的な学びが具現化したのである。 このように, フィードバック機能を軸とした自律性支援的指導行動を援用して, 足場づくりと足場はずしを実施することにより自律的な学びが促され, 科学概念の構築に寄与することが明らかとなった。
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