Outline of Annual Research Achievements |
1. 研究目的 : 本研究では、金属疲労損傷の可視化を目標として、状態変数である作用応力と内部応力の差(有効応力と呼ぶ)を利用した損傷方程式を適用することにより、損傷をHart型非弾性構成式で時々刻々と計算して表示するような損傷メータの概念を試行することを最終目的とした。本年度の目標は, 室温でも高温型の塑性状態式(両対数上での応力-非弾性ひずみ速度の関係が上に凸型の曲線)が見込める純アルミニウムについて、荷重緩和実験を実施して、応力-非弾性ひずみ速度のデータを取得する。この塑性状態式や追加の実験より、他の材料で開発済みの非弾性構成式群のパラメータ等を決定し、疲労損傷パラメータである有効応力の仕事を計算できるようにすることを目指した。 2. 研究方法 : 最初に、市販の純アルミニウムA1050の丸棒を購入し、直径10mm平行部長さ72mmの試験片に加工した。本研究では試験片平行部を測定する伸び計が都合できず、試験片の掴み部間の変位を測定するため、正確な変位データを取得することは難しい。したがって、本研究において取得した変位データと試験片形状から変位計標点間の剛性からモデリングした変位との関係を求める手法を開発することも試行した。次に、室温におけるモデリングを検証する予備実験、塑性状態式のパラメータを同定する引張ひずみ振幅を数種類変えた荷重緩和実験、引張負荷速度を数桁変えた硬化関数を定式化するための定速引張試験を実施して、データを解析した。しかしながら, 目標に到達することはできなかった。 3. 研究成果 : モデリングした標点間変位については、荷重及び変位の実験データのばらつきとセンサー分解能(1μm)が原因で誤差が非常に大きくなった。これより、正確に測定可能な変位計が必要であることが判明した。そのためか、荷重緩和データは両対数上で期待とおり室温で「上に凸な高温型」にはならず、ほぼ直線となり、「下に凸な低温型」とも言えず、中間型になることが判明した。これは、現状の試験機では不可能な高温度での実験が必須であることを示唆する。定速引張実験は, 室温で負荷速度の影響が認められたが、応力-ひずみ曲線において十分に非弾性ひずみが生じた領域でも小さい依存性を示すだけであることが判明した。しかし、ひずみ速度依存性がないとの通説には疑問が残る結論となった.
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