高校の生物教室の設備(乾熱滅菌器、オートクレーブ、簡易クリーンベンチおよびクールインキュベータ等)を使用し、17日齢ラット胎児海馬からの神経系細胞群の調製と培養が可能であることを確認した。その際、培養皿と一緒に1%(w/v)炭酸水素ナトリウム水溶液を密閉容器内に置くことで、二酸化炭素濃度調節機能を持たないインキュベータ内でも4週間前後は細胞を培養し続けることが可能であった。また、細胞を播種する際に培養皿底面をアガロースゲルでコートし、その底面付近に、先端部のみにポリエチレンイミン水溶液で細胞接着性コートを施したナイロン糸(φ100μm)を配置すると、ナイロン糸先端部に選択的に付着した細胞塊が形成されることを確認した。 上記の方法で作製した細胞塊にカルシウム感受性蛍光色素fluo-3AMを取り込ませて倒立型蛍光顕微鏡でタイムラプス撮影をすると、ニューロンの自発発火に伴うと考えられる自発的な細胞内カルシウムレベルの上昇が細胞塊内で同期的・周期的に起こる様子が記録された。ここで、ピンセットでナイロン糸の端をつまんで細胞塊を運搬し、複数個の細胞塊を近接させて同様の蛍光観察を行ったが、細胞塊どうしの間では細胞内カルシウムレベルの変動タイミングに相関は見られなかった。 以上の実験のプロセスの一部は高校生物の授業内で生徒らと共有し、蛍光顕微鏡のしくみやカルシウムイメージングの原理、ならびに神経細胞を中心とした細胞間の情報伝達のしくみ等を題材とした総合的な学習を行った。
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