Outline of Annual Research Achievements |
【研究の目的】被熱をうけた金属上の潜在指紋について、被熱をうけた熱履歴が分からないことが検出作業を困難なものにしている。被熱を受けた検体からの指紋検出法を確立するため、次の5点を検討した。①各種金属片の潜在指紋の色調及び表面状態からの熱履歴温度の推定、②指紋中の金属塩化物等が、酸化促進に影響を及ぼすのかの検討、③実務に即した加熱熱源の検討、④200℃に加熱された潜在指紋は、メイラード反応等により蛍光強度が増加することを確認しており、各種被熱金属検体での確認、⑤被熱をうけた湾曲状の金属検体からの顕在化システムの構築についての検討を試みた。 【研究計画及び結果】真鍮、銅、ステンレス、アルミ合金の検体に、指紋を押なつ後、一昼夜乾燥させたものを検体とした。①アルミ合金以外は、被熱により300℃付近で指紋が消失し、金属片の色調が変色する温度が約400℃近傍にあり、再加熱(600℃)により温度を更に上げることで指紋が顕在化されることが確認できた(再加熱法)。②金属塩化物(Na, K, Ca, Mg)水溶液を真鍮上に滴下後加熱したところ、指紋隆線の酸化状態(凹部となる)に酷似しており、金属元素と指紋中金属塩化物のイオン化傾向の差が大きいほど、顕在化の度合いは増す傾向が確認できた。また、真鍮の場合、銅と亜鉛のうち、イオン化傾向の大きい亜鉛が選択的に酸化され、高温であることと塩化物イオンが存在するときに進行する脱亜鉛腐食と呼ばれる現象により酸化亜鉛の層が真鍮表面に析出する状況が確認できた。なお、①のアルミ合金は酸化膜の影響と金属塩化物(Na, K, Ca, Mg)とのイオン化傾向に大差がないため、指紋の顕在化ができなったと考えられる。③ガンヒーター等の様々な熱源を用いてサーモクレヨンにより被熱温度を確認しながら顕在化を試みたところ、大面積の金属片からの指紋検出にはバーナー等で金属検体の色調を確認しながらあぶる方が効率的なことが確認できた。④200~600℃での被熱の検体において、青色LED等により蛍光発現を確認したが、メイラード反応等による蛍光強度増幅を確認できなかった。⑤湾曲の被熱をうけた金属検体について、再加熱法による顕在化を試み、静止画、動画として取り込み分割する画像処理等を試みたがひずみによる影響は避けられず、硬化樹脂等に凹部分を転写させる手法が効率的であると考えられた。
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