隠岐諸島における地表性クモ類の分類学的検討と系統地理学的解析
Project/Area Number |
17H00443
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
生物学Ⅱ(動物)
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Research Institution | 一般財団法人広島県環境保健協会 |
Principal Investigator |
井原 庸 一般財団法人広島県環境保健協会, 団体職員
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Project Period (FY) |
2017
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2017)
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Budget Amount *help |
¥490,000 (Direct Cost: ¥490,000)
Fiscal Year 2017: ¥490,000 (Direct Cost: ¥490,000)
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Keywords | 分類学 / 生物地理 / 地表性クモ類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、隠岐諸島の地表性クモ類のうち、ナミハグモ属Cybaeusとヤミサラグモ属Arcuphantesの分類学的検討と未記載種の記載を行うことを目的とした。ナミハグモ属は地域レベルの固有種の多さが際立つ。ヤミサラグモ属も地理的分化が著しく、いずれも分類学的研究が遅れている。 隠岐諸島は島根半島の北40~80kmの日本海に位置し、主要な4島(島後と島前3島)で構成される。野外調査を実施し、地表性クモ類の詳細な分布情報を得るとともに、島間での地理的変異の実態を明らかにした。 ナミハグモ属は、面積が大きい島後では大型と中型の2種、島前の3島では中型種だけが分布し、小型種が欠落することがわかった。大型種はカチドキナミハグモで、雄触肢(交尾器)の形態は島根半島の集団に類似する。隠岐の固有種である中型種は、交尾栓をもつナガトナミハグモ種群に属する。島間の集団で雄触肢の基本的な形態はよく似ているが、島前の集団は島後に比べて指示器の突片が発達している。さらに、島前の島間では、その形態に明らかな違いが認められる。指示器の突片は交尾栓となる部位で、交尾栓が付着する雌の外雌器開口部の形態にも地理的変異がみられる。そのため、生殖隔離の可能性が示唆され、複数の隠蔽種が含まれると考えられる。 オキヤミサラグモは隠岐の固有種で、島間で交尾器形態に違いがあることが知られていたが、島間および島内の詳細な地理的変異を明らかにすることができた。ヤミサラグモ属では交尾器の微細な違いが交尾行動を妨げることがわかっており、島後と島前の集団間でも生殖隔離の可能性が示された。島前の集団は函館や福井の集団に交尾器形態が酷似し、エゾヤミサラグモとするのが妥当である。 2つの分類群で島後と島前の間で形態のギャップが大きいという興味深い結果が明らかになり、今後は地理的分布パターンと分子系統解析による相補的な検討が必要である。
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Report
(1 results)
Research Products
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