Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的 ズツキダニ類は哺乳類の体毛・体表に終生寄生するヒゼンダニ上科のダニ類である. 本研究は日本産ズツキダニ類3科(Myocoptidae, Listrophoridae, Chirodiscidae)の捕獲調査及び標本調査により, これらの生息実態を解明することが主な目的である. 得られた成果 これまでに報告されているズツキダニ類の標本の所在を, 文献調査, 医学・疫学関係者への聞き取り調査, 博物館での実地調査により所在と現状を確認した. このうち, 和田(1967)のAlabidocarpus fujii(以下, フジイヨコツブレダニ), および町田・大林(1967)のMetalistrophorus pagenstecheriが国立科学博物館に収蔵されていることが確認できた. Ono(1969)のMyocoptes japonensis japonensisは目黒寄生虫館に保管されている可能性が高いが, 今回確認できた標本では採集日が論文に記載されていた日付とは異なり, 同種別個体であると判断した. このほか, 標本の保管場所の記載はないが文献に記録のあったものについて関係者に問い合わせたところ, 多くは紛失, 一部は本年度中に連絡に対する返答無しとなった. ズツキダニ類の標本は液浸標本およびプレパラート標本が主であるため, 博物館等では定期的なメンテナンスが必要である. しかし, 博物館に寄贈されない, 研究終了後に廃棄される, 博物館での専門スタッフが不足していることにより整理・管理が追い付いていないなどの問題があり, 国内においては過去のズツキダニ類標本を参照することが困難な状況である. また, 伊豆半島南部にある洞窟(下田市, 南伊豆町, 松崎町)において, ユビナガコウモリの生息を確認する予備調査を1回と捕獲調査を2回実施した. 捕獲調査では, ユビナガコウモリ100頭, キクガシラコウモリ14頭, コキクガシラコウモリ5頭を調査した. この調査により, ユビナガコウモリからフジイヨコツブレダニの幼・若・成虫を採取し, 寄生状態の写真を撮影することができた. このほか, 北海道, 静岡県, 愛知県で採集された哺乳類19種43頭の体表を観察したが, ズツキダニ類は見られなかった.
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