Outline of Annual Research Achievements |
ササ類は我が国のいたるところに広く分布している. ササ類分布地域では, ギャップ形成による光条件の好転によってササ類の成長が旺盛になり森林の更新を妨げたり, ササ類の繁茂により材木の伐採後の作業に大きな支障が出ている. このように林床のササ類は生態学的にも林業的にも大きな問題である. ササ類は数十年に一度の一斉開花とその後の一斉枯死というダイナミックな動態を示す. この動態は, 林床の光環境や水分環境を激変させる. ササ類の一斉枯死による光環境の好転は, 多くの種類の稚樹や林床植物の育成に, 正の影響を及ぼすと考えられる. しかし, 水分環境の悪化(乾燥)は, 負の影響を及ぼすと考えられる. そこで, 菅平高原実験所内において, 遷移段階(アカマツ林, アカマツ・ミズナラ混交林, ミズナラ林)とクマイザサ枯死状況(未開花, 枯死開始, 枯死)が異なる9タイプで, 1m×1mの調査地を5か所ずつ設置し, 林床の植生調査を行った. また, 光環境と水分環境の調査のためデータロガーを設置した. 植生調査の結果から, 下層植生の多様性の差は, 遷移段階の違い間では大きく変わらず, クマイザサの枯死状況間でより大きく異なった. また, 稚樹はほとんどの地点で発見することができなかった. クマイザサが繁茂している林床, および, 繁茂していた林床で育つことのできる植物はほとんどないことが分かった. データロガーによる光環境と水分環境の調査は, 機器のトラブルにより, 十分なデータを得ることができなかった. また, 刈り取り調査は実施することができなかった.
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