Outline of Annual Research Achievements |
【目的】 難産とは分娩経過中において人工的な助産なしでは分娩が困難な状態のことである。これら難産に関する研究は乳牛については多く行われているが、肉牛、特に黒毛和種においては少ない。阪谷ら(2014)は、子牛体重が38kg以上の母牛群では、38kg未満と比較して破水から分娩までの時間が有意に延長したと報告している。このことから、難産ではなくても分娩において母牛が受けるダメージには差が生じる可能性がある。そこで、本研究では介助のない分娩において、母牛体重に対する子牛体重の大きさが、分娩後母牛の生殖器官回復に及ぼす影響を明らかにする。 【方法】 供試験牛として宮崎大学住吉フィールドで飼養されている黒毛和種の妊娠牛20頭を用いた。 ・分娩予定1ヶ月前の母牛体重を分娩後24時間以内に子牛の体重を測定した。分娩後の生殖器官の回復程度を評価するため、分娩後1, 2, 3, 4, 5, 6, 7週に超音波診断装置を用い、子宮角の断面積と卵巣動態を調べた。子宮角は左右子宮角断面積の差が50㎡未満になった週、卵巣は排卵が確認された週を記録した。また、分娩後1, 3, 5, 7週に全細胞における好中球の比率を調べた。繁殖成績として人工授精(AI)を行い受胎率の有無を調査した。子牛体重の母牛体重に対する大きさで2群(大きい群vs小さい群)に分け、上記生殖器官回復状況、血液成分そして受胎率について比較検討した。 【結果】 子牛体重に対する母牛体重の比率は平均で0.07(0.03~0.1)であった。中央値で2分割した場合(大きい群n=10、小さい群n=10)、受胎率、卵巣機能回復日数に有意な差は認められなかった(P>0.05)。子宮角内好中球の割合も分娩後1, 3, 5, 7週において両群間において有意な差は認められなかった(P>0.05)。一方で大きい群は小さい群に比較して早く(P<0.05)左右子宮角断面積の差がなくなった。 【結論】 介助を必要としない分娩であれば黒毛和種においては、母牛体重に対する子牛体重の大きさは分娩後の繁殖成績に影響はないと考えられた。
|