Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】腎不全時の薬物の血中濃度の上昇は、糸球体濾過機能で予測される腎機能低下のみによらず、尿細管に発現するトランポーターの機能変動に基づく可能性が高いことが示唆されている(Am. J. Physiol. Renal Physiol., 297 : F71-F79, 2009)。このため、腎不全患者の残存する腎機能は、糸球体濾過だけでなく尿細管分泌を考慮する必要がある。有機アニオントランスポーター(OATP)4C1は尿細管に発現する唯一のOATPファミリーであり、その基質となる薬物については未だ不明な点が多く存在する。本研究ではOATP4C1を介した薬物相互作用を明らかにすることを目的として、種々の薬物によるOATP4C1阻害を評価した。 【研究方法】OATP4C1安定発現細胞株を用いて臨床で頻用される薬物のOATP4C1阻害スクリーニングを行った。基質としてトリョードチロニンT_3を用いた。T_3は細胞内から抽出し、LC/MS/MSで測定した。 【研究成果】レボフロキサシン、フルバスタチン、サキナビル、リトナビルなどの各種薬物がOATP4C1を介したT_3輸送を抑制すること確認した。その中でもサキナビルをはじめとするHIVプロテアーゼ阻害薬に着目し、T_3輸送抑制に対する濃度依存性を測定した。サキナビル、リトナビル、ネルフィナビル、ロピナビル、ダルナビル、アンプレナビルを用いてT_3輸送阻害効果を測定したところ、サキナビル、リトナビル、ダルナビルは濃度依存的にOATP4C1を介したT_3輸送を抑制した。これらの薬物はOATP4C1を介した薬物輸送を阻害する可能性が示唆された。今後、これらの薬物自体がOATP4C1の基質となるかどうかについて検討が必要である。
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