今回の研究は、集中治療室における経口気管挿管患者の抜管後睡眠状況早期改善を目的に調査・検討を行い、ICU入室患者の抜管後早期概日リズム改善に向けた睡眠導入剤使用に関するPBPMの実践に向けた取り組みを行った。まず、当院における集中治療室での経口睡眠導入薬使用状況について調査するため、重症管理システム、電子カルテ、薬剤部門システムを用いた後ろ向き調査を行った。2016年12月の1ヶ月間にICUに入室していた患者273名を対象に、入室中の経口睡眠導入薬使用の有無に関連する事項を抽出した。睡眠導入薬使用に関連する因子として、入院時の睡眠導入薬の持参、ICU入室期間、入室時気管挿管の実施、入室期間中のICDSC最大値、挿管患者における挿管中のRASS平均値が挙げられた。通常、ICUに入室した患者では、それまでに使用していた常用薬の多くが中止される。睡眠導入薬を長期連用している患者では、精神的睡眠導入薬依存が生じている可能性があり、ICU入室中に睡眠導入薬を必要とすることが多いことが示唆された。そのような患者では睡眠導入薬中止により不眠となり、せん妄を惹起する可能性があるため、予防的に睡眠導入薬を使用することが望ましく、経口睡眠薬を導入するPBPMの対象患者の要件に組み入れる必要があると考える。次に、客観的睡眠状況の評価を行うため、ICU入室患者を対象に唾液中メラトニン濃度測定を計画しているが、現時点では試験プロトコルを作成中であり、成果を見出すに至っていない。
|