〔目的〕治療抵抗性統合失調症治療薬であるクロザピンの投与量設定は、血中濃度を基にすることが望ましいとされているが、血中濃度や副作用発現頻度は人種間で変動することが知られている。当院では臨床研究としてクロザピン血中濃度測定を実施しているが、個体内・個体間変動が大きく、薬物治療効果や副作用発現頻度と血中濃度が乖離することが散見される。そこで本研究では、クロザピン及び活性代謝物ノルクロザピン血中濃度の個体内・個体間変動要因を明らかにするため、有効性・安全性評価項目との関連を解析することで、クロザピン至適投与量設計を確立することを目的とした。 〔方法〕当院で文書による同意の得られたクロザピン投与中の統合失調症患者を対象とし、余剰検体を用いてクロザピン及びノルクロザピン血中濃度を測定した。電子カルテより、有効性評価の指標となるPositive and Negative Syndrome Scale(PANSS)あるいはBrief Psychiatric Rating Scale(BPRS)のスコアを抽出した。副作用評価の指標として血液検査結果(白血球数、好中球数等)、脈拍、体重、血糖値、薬原性錐体外路症状評価尺度(DIEPSS)などを抽出した。また、併用薬の情報の抽出に加え、患者から喫煙量やカフェイン摂取量を聴取した。 〔結果と今後の展望〕対象患者のクロザピン及びノルクロザピンの血中濃度測定が完了し、現在併用薬、喫煙量やカフェイン摂取量の影響等も考慮したうえで解析中である。今後も引き続き血中濃度データを蓄積し、得られた成果を基にして、薬物治療効果並びに副作用発現頻度との関連性を解析する予定である。
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