Outline of Annual Research Achievements |
研究目的 MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)菌血症治療において、ガイドラインで代替薬とされる抗MRSA薬テイコプラニン(TEIC)が第1選択とされる場合も多く、その妥当性は不明である。これまでの科学研究費採択課題において、TEICのMRSA菌血症に対する治療効果を抗菌薬感受性指標である最小発育阻止濃度(MIC)に着目した結果、CLSI基準で感受性ありとされるMIC=4または8μg/mLの症例は、MIC≦2μg/mLの症例と比較し治療効果が低い可能性が示された。本研究ではTEICとバンコマイシン(VCM)およびダプトマイシン(DAP)のMRSA菌血症に対する治療効果を特にMICに着目して比較検討した。 研究方法 北海道大学病院において2008年1月から2016年4月までにMRSA菌血症を発症しVCM、TEIC、DAPのいずれかを第1選択として用いられた患者(DAPに関しては切り替え例を含む)に対し、治療効果を後ろ向きに比較検討した。30日以内の死亡、菌の持続、菌の再発のいずれかを満たす場合、治療失敗と定義した。 研究成果 VCM、TEIC、DAP投与群における治療失敗例は11/45(24.4%)、7/18(38.9%)、7/18(38.9%)であり統計学的有意な差はなかった。有効群および無効群におけるTEIC MIC>2μg/mLは2/46(4.35%)、5/21(23.8%)(p=0.027)であり、多変量ロジスティック回帰分析結果からTEIC MIC>2μg/mLが治療失敗に寄与する独立因子として示唆された(OR 6.88, 95%CI 1.21-39.0)(p=0.021)。以上よりTEIC MIC>2μg/mLである場合、CLSI基準で感受性ありとされていても、VCM、DAPなど他の抗MRSA薬への変更を推奨することが菌血症治療成績向上に繋がる可能性を示した。
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