Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】 抗VEGF抗体ベバシズマブ(BV)は、殺細胞性抗がん薬よりも副作用の少ない薬剤として、様々ながん種におけるキードラッグとしての有効性が期待される製剤だが、高血圧・蛋白尿といった毒性が高頻度で発生する。現在、腎保護機能の観点からアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)が汎用されているが、その妥当性は詳細には検討されていない。そこで本国におけるBV誘発性高血圧に対する各種降圧薬の効果検証を本研究の目的とした。 【研究方法】 北海道大学病院消化器内科において大腸癌に対しBV含有レジメンが施行された患者を対象とし、電子カルテを用いて後方視的に情報収集を行った。観察期間は高血圧発症あるいはBV投与から1年とし、以下の項目について検討を行った。 1. 新規に高血圧を発症した群における、血圧変動ならびに降圧薬の処方内容の変化 2. 降圧薬を内服中の患者(ARB/ACE阻害薬群、Ca拮抗薬群、多剤併用群)における、高血圧および蛋白尿の発現率 統計学的処理は対応のあるt検定、ならびにカイニ乗検定を用いて行った。 【研究成果】 1. BV誘発性高血圧に対しARBが投与された群は有意な血圧低下を示した(-11.3mmHg, p=0.009)。観察期間内、降圧薬初期投与量で治療を遂行できた患者は5/23だった。 2. 各群において蛋白尿の発現率と血圧コントロール率に有意な差はみられなかった(p=0.1, p=0.09)。またARBを内服していた群は、Ca拮抗薬を内服していた群と比べて、投与期間中に降圧剤の変更ないし増量が生じる患者が多い傾向にあった。(7/13 vs 3/16) 【考察】 本研究においては、ARBによる蛋白尿や高血圧の予防効果については証明できなかった。BV誘発性高血圧の制御においては、初期投与量の検討や、Ca拮抗薬の併用を積極的に行うことで、より早期に安定した血圧に到達できるものと推測する。
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