Outline of Annual Research Achievements |
○研究目的 : 抗がん薬には催奇形性や生殖毒性などがあり、その取扱いは薬の準備から、患者への投与、廃棄・排泄に至るまでのすべての段階で注意を要する。医療現場で発生した抗がん薬注射の廃棄物は、医療廃棄物処理容器である耐貫通性のポリプロピレン製容器を使用している。この棄物容器は、感染性廃棄物を処理する基準で作成されており、抗がん薬を閉じ込める性能が明らかになっていない。そこで本研究では、「がん薬物療法における曝露対策合同ガイドライン」で示される抗がん薬廃棄物の処理方法で、棄物容器の閉じ込め性能を評価した。 ○研究方法 : 今回の実験では生理食塩液50mL中にシクロホスファミド(CPA)500mgと5-フルオロウラシル(5-FU)500mgを含む液体を抗がん薬廃棄物サンプルとして実験を行った。 ①抗がん薬が棄物容器に投棄される際、ポリエチレン製の袋に入れることが推奨される。ポリエチレン製の袋に、抗がん薬廃棄物サンプルをいれ、常温にて3時間静置したのち100c㎡の範囲で拭取り調査を行った。②抗がん薬廃棄物サンプルをポリエチレン製の袋に封入し、棄物容器に投棄後、すぐに蓋をロックし後24, 72時間後に拭取り調査を行った。③棄物容器の、蓋部分の構造が異なるものを3種類準備し、蓋の開閉による内容物の飛散の可能性について検討した。この調査では酢酸エチルを使用し、蓋の開閉によって棄物容器内のにおいを感知可能か30名で調査した。なお、CPAと5-FU測定はシオノギ分析センター株式会社に委託した。 ○研究成果 : ①②の結果から、抗がん薬はポリエチレン製の袋からが滲出するが、廃棄容器自体には十分な閉じ込め性能があることがあることが明らかとなった。一方で、廃棄容器の蓋をロックするまでは、廃棄容器内の空気が開閉方式によってかなり拡散することが明らかとなった。本結果は、抗がん薬廃棄物の適正な廃棄物保管管理基準策定の一助となることが期待される。
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