Outline of Annual Research Achievements |
臨床検査では様々な生体内成分の測定に比色分析が用いられているが, 単クローン性に免疫グロブリンが血中に増加する多発性骨髄腫のような疾患では, 免疫グロブリンが測定試薬と非特異反応をおこし混濁物を形成することで, 比色分析に影響を及ぼすことが知られている。しかしながら, 免疫グロブリンが測定試薬成分と反応して混濁物を生じる機序は未だ明らかではなく, 非特異反応の回避策についても明確な方法が確立されていない。本研究ではビリルビン測定で非特異反応が疑われた患者血清に対して, (1)非特異反応の原因物質が免疫グロブリンであることを確認し, (2)ビリルビン測定試薬と反応しうる断片部位を明らかにすることを目的として検討を実施した. まず, 患者血清のビリルビン測定の正確性を確認したところ, 患者血清では希釈直線性が認められず, 添加回収試験においても回収率が低いことから, ビリルビン測定に異常が生じていることが確認された. さらに, ビリルビン測定試薬と患者血清を混ぜて形成させた混濁物を遠心操作により管底に沈め, 上清中の免疫グロブリン濃度を測定した結果, 上清中には免疫グロブリンがほとんど残っていないことから, 混濁物は免疫グロブリンから形成されていることが確認された. 次に, 免疫グロブリンを除去または断片化させた患者血清と測定試薬を混和させ, 混濁物の消失や混濁物形成に関わる部位を調べる予定であったが, 本症例では血清中の免疫グロブリン濃度が高く除去・断片化しきれず, さらに希釈し過ぎるとビリルビン測定試薬との混濁物形成が弱まってしまうという問題点が生じた. この問題点を踏まえ, 免疫グロブリンを精製した上で検討する等, 検討方法の改善が必要であると考えられた.
|