Outline of Annual Research Achievements |
失語症は, 脳卒中後の患者の社会参加の大きな阻害因子となっている. また, 昨今諸外国では, 脳卒中リハビリテーション分野に多くのエビデンスがあるCI療法の概念を失語症訓練に応用したConstraint-Induced Aphasia Therapy(CIAT)(Pulvermullerら, 2001 ; Johnsonら, 2015 etc)が注目されている. このCIATが我が国で実施したという報告はまだなく, 本研究ではその日本語版のプロトコルを作成, 実施し, 臨床応用へと展開するための研究基盤を確立することを目的とした。 今回, これまでの先行研究(Pulverraullerら, 2001 ; Johnsonら, 2015 etc)を参考に日本版プロトコルを作成した. 具体的には, 1日3時間×5日間×3週間, 計45時間の短期集中訓練を実施. 訓練中, 代替コミュニケーションを制限し, 音声言語の使用を促す. 上肢のCI療法の課題指向型訓練に相当する5つの言語訓練を実施. 評価には, 標準失語症検査(SLTA), WAB失語症検査, 日常生活での発話の使用状況を評価するVerbal Activity Log(VAL)を用いた. 4名の慢性期失語症患者に対して訓練を行った結果, VALのスコアは著明な改善を認め, SLTAやWABでも一定の改善を認めた. これは, 訓練中, 言語聴覚士とともに問題解決を行いながら訓練を行うことで, 日常生活での発話の使用が強化され, その成功体験によって, 発話の学習性不使用の克服へとつながったものと考えられた. 本研究の結果は, 我が国でもCIATが慢性期失語症患者に対して有効である可能性を示唆するものであるとともに, 慢性期でも失語症は一定の改善を示すという先行研究(中川, 2014 etc)を支持するものであると考えられた. この予備実験により, 今後, 臨床応用へと展開するための研究基盤を確立するという目的が達成できたものと考えられる.
|