【目的】ABO血液型主不適合の造血幹細胞移植では、患者の赤血球造血の回復が遅延する場合があるが、詳細なメカニズムはまだ解明されていない。一方、患者由来とドナー由来の細胞の混合比率を検出するキメリズム解析は、ドナー細胞の生着確認のために極めて有用な検査であるが、DNAが存在しない赤血球の生着評価は困難であった。そこで、有核細胞である未熟な赤血球前駆細胞を用いたキメリズム解析法を確立し、その方法を用いて、移植後の赤血球系造血不全の原因が、赤血球の産生抑制にあるのか、あるいは、産生はされているがドナー型赤血球に対する赤血球凝集素による破壊にあるのかを明らかにすることを目指した。 【方法】まずは単核球から脱核前の未熟な赤血球前駆細胞を培養する条件を検討した。次に、STR-PCR法による白血球系細胞のキメリズム解析と同様に、赤血球前駆細胞も解析可能かどうか検討した後、移植後患者検体から赤血球前駆細胞を培養しキメリズム解析を行った。 【成果】メチルセルロース培地lmLに対し、6~8×10^5個の単核球を添加した場合、2週間5%CO_2インキュベーターで培養後に1培養皿あたり5個程度のBFU-Eコロニーが得られ、これらから1μg以上のDNAを回収できた。STR部位に対する蛍光標識プライマーを用いてPCRを行い、キャピラリー電気泳動法でフラグメント解析を行った結果、白血球系細胞のキメリズム解析と同様に解析可能であり、赤血球系細胞のキメリズム解析法を確立できた。ABO一致同種骨髄移植後8年経過し造血は回復している患者のキメリズム解析を行った。T細胞は混合キメラが遷延している症例であったが、赤血球系細胞は完全ドナー型であることが明らかとなった。造血不全症例のキメリズム解析はできなかったため、今後、症例数を増やして検討する必要がある。
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