Outline of Annual Research Achievements |
大血管手術患者は呼吸器合併症のリスクが高く, そのなかでも長期人工呼吸器管理(MV)は予後不良因子で全身性筋力低下のリスク因子でもある。神経筋電気刺激(NMES)は術後早期の骨格筋タンパク分解を抑制する可能性が報告されており, 術後安静期でも筋力や運動耐容能の維持改善が期待できる。しかしながら, 胸部大血管患者においてNMESによる下肢筋力維持・改善効果は明らかではない。本研究の目的は, 胸部大血管患者へのNMESの効果を明らかにすることである。 まず, 当研究代表者所属施設にて待機的な胸部大血管手術患者における術後筋力低下の関連因子を検討した。検討結果を踏まえ, NMESの研究対象者は, 待機的に胸部大血管手術を施行し, 術後24-168時間のMVを要した65歳以上の患者とした。介入群は通常の術後理学療法に加えて術後2週間のNMESを施行し, 対照群は通常の術後理学療法のみを施行した歴史的対照群とした。主要評価指標は術後14日目の膝伸展筋力とし, 副次的評価指標は術後握力, 術後MV, ICU在室及び術後在院日数とした。 術後筋力低下のリスク因子は, 年齢, 手術時間, 術後MV, 術後離床経過であった。 まず, 歴史的対照群を抽出した。該当症例は46名となり(中央値 ; 年齢72歳, 膝伸展筋力低下率18%, 握力低下率18%, 術後MV63時間, ICU在室5日, 術後在院日数26日), 9割が自宅退院であった。 本報告書作成時までに終了したNMESの介入群は2例と少なかったが, これは倫理審査手続きが長期にわたったことが大きい。NMESは日常臨床で用いられているが, 本検討は前向き介入前後比較試験となるため, 倫理委員会に申請した。下記に対象特性を示す。 年齢74-79歳, 膝伸展筋力低下率43-47%, 握力低下率35-38%, 術後MV117-166時間, ICU在室10-11日, 術後在院日数29-45日で2例とも自宅退院した。 本研究は介入群の症例数が少なく, 今後さらに検討が必要と考えられた。
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