Outline of Annual Research Achievements |
多くの人は「自然のものは安全, 人工物質は危険」という漠然としたイメージを持っている。しかし, 危険かどうかの判断は, そうしたイメージでなく, 科学データに基づき判断されるべきである。 本研究では, 児童はどのような「自然と人工」のイメージを持っているか, また, 科学データを元にしたインタラクティブブックを読むことでそれがどのように変容するかを調べた。 結果は, 「自然」の方が「人工」よりも優れているとするイメージをもつ児童が約6割であり, 「遺伝子組み換えは安心」というイメージは, 約2割だった。インタラクティブブック読後は, 「自然の方が人工より優れている」という認識はあまり変わらなかったものの, 「遺伝子組み換えは安心」と捉える児童が約8割に上昇するなどイメージは肯定的なものが多くなった。 「遺伝子組み換え」という技術そのものの理解は, 小学生ではなかなか難しい。しかし, 児童は十分な知識がない分, 大人ほどに負のイメージを事前に持っていない。そのため, 余計なバイアスなくインタラクティブブックを読み, 「人工的な技術である遺伝子組み換え」の利点も受け入れることができたのではないかと考える。 とはいえ, 「自然の方が人工より優れている」というイメージに変容が見られないということは, イメージが既に強くある中では, このインタラクティブブックが「人工としての遺伝子組み換えの技術」は, 「自然におこる変異」や「半分自然に任せる交配」よりも優れているという見方にはなっていないということである。「遺伝子組み換え」の利点は理解するが, それが即, 「人工は自然より良い」ということにはならないのは, 見方としてある意味, 健全である。固定化されたイメージのない時期に, 科学的なデータから「遺伝子組み換え」に学ぶことは適切なリスク観を育てるのに有効である。
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