男性役割葛藤を解明するメタ規範の理論的・実証的研究
Project/Area Number |
17J00758
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Gender
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
渡邊 寛 筑波大学, 人間系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2019)
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Budget Amount *help |
¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
Fiscal Year 2019: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2018: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2017: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | ジェンダー / 男性役割 / 精神的不健康 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,男性役割態度や男性役割期待と精神的健康の関連をさらに深めること(1)と,男性役割態度に影響する要因を検討すること(2)を予定していた。 (1)については,上司・同僚に関する調査(N=723)と妻に関する調査(N=374)を行った。前者の研究では,上司・同僚から男性役割を求められる男性は,職場での嫌がらせやセクハラも同時に感じており,これらの3つの行為が関連して生じていることが明らかになった。また,男性役割態度によらず,上司・同僚から,職場で嫌がらせを受けていると感じる男性ほど,上司・同僚への不信感が高く,職場での居心地が悪いと感じていた。後者の研究では,有配偶男性は,妻が期待するよりも稼ぎ手役割を果たしていると考えていたが,家事役割や会話については,妻が期待するよりもできていないと考えていた。また,男性役割態度によらず,夫婦関係に対して人格的にコミットしていない男性や,諦め・機能的にコミットしていない男性では,会話に関する妻の期待と実際の遂行のずれが大きいほど,夫婦関係満足度が低く,ずれが小さいほど,夫婦関係満足度が高かった。夫婦関係に対して規範的にコミットしている男性は,会話に関する妻の期待と実際の遂行のずれが大きいほど,夫婦関係満足度が高く,ずれが小さいほど,夫婦関係満足度が低かった。 (2)については,昨年度の研究で得られたデータを用いて,2つの分析を行った。第1に,働いている社会人男性のデータ(N=820)から,年収の高さ勤務時間の長さ,役職が男性役割態度に影響しているほか,概ね,働いている組織の組織風土に沿った男性役割態度を有していることが明らかになった。第2に,有配偶男性のデータ(N=619)から,妻の年収の高さ,妻の就業形態が,男性役割態度に影響していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,2つの新たなデータ収集を行ったほか,これまでに得られたデータから,改めて,男性役割態度に影響する要因を検討した。昨年度と今年度の研究により,男性の男性役割態度に影響する要因として,男性自身や妻の働き方,男性自身が働いている組織風土,テレビドラマの影響が明らかになった。男性役割態度による精神的健康への影響については,男性役割態度が,職場感情や夫婦関係満足度といった関係性を介して精神的健康に影響することが明らかになった。他者から男性役割を求められることによる影響については,上司・同僚から男性役割を求められることが,ほかの職場での嫌がらせと連動して生じ,男性の上司・同僚への不信感を高め,職場での居心地を悪くすることが明らかになった。また,人格的にコミットしておらず,妻からの会話の期待と実際のずれが大きいと考えている男性は,夫婦関係満足度が低く,規範的にコミットしており,妻からの会話の期待と実際のずれが大きいと考えている男性ほど,夫婦関係満足度が低かった。 以上より,おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では,男性役割態度によらず,親しい他者から男性役割を求められると,関係性を悪化させ,精神的健康が低下していた。しかし,以下2点が明らかになっていない。第1に,男性自身が男性役割を意識した時に,どのような認知や感情を抱くかについて,量的に検討されてこなかった。第2に,どのような人が,男性に対して男性役割を求めているのか,そうした人は,男性が男性役割を逸脱したことに対してどのようなイメージを持つかについては,明らかになっていなかった。 そこで,平成31年度は,2点の検討を行う。第1に,男性が,男性役割を意識した時の認知や感情について,量的な検討を行う。伝統的な男性役割や新しい男性役割を意識した経験を自由記述により尋ね,その際の認知や感情を量的に調査する。認知や感情は,面接調査を踏まえて,否定的感情・拒否,肯定的感情・取り入れ,消極的受容の3種類を尋ねる。第2に,男性が伝統的な男性役割から逸脱している例として,男性保育士を取り上げ,男性保育士へのイメージと,男性役割への態度との関連を検討する。併せて,どのような態度を持つ人が,男性に対して男性役割に沿うことを求めているかを検討する。 以上をすべて終えた段階で,男性役割の個人内の葛藤,他者からの葛藤,影響要因を総括し,男性役割のメタ規範を用いて理論的な枠組みを提示する。
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Report
(2 results)
Research Products
(15 results)