Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
プルーストの初期のテクスト(草稿資料や書簡などを含む)から後年の『失われた時を求めて』へ至るまでに使用されている多様な音楽レフェランス(音楽に関する固有名を中心とした語句への言及の典拠)を精査し、その意味と機能の変遷を明らかにすることを試みた本課題の最終年度は、『失われた時を求めて』の草稿から印刷稿までを含むテクストの考察、口頭発表、そしてフランスでの長期の在外研究を主に行った。まず『失われた時を求めて』の音楽レフェランス、特にプルーストが創造した架空の作曲家ヴァントゥイユとその音楽をめぐる記述の考察に集中的に取り組みながら、昨年度の考察でその重要性が明らかとなった、プルーストがバカンスを過ごした第三共和政期の海辺のリゾート地における音楽受容をテーマとする口頭発表を行った(オペラ学研究会第41回例会、2019年11月16日)。在外研究中は、COVID-19感染拡大のため予定していた地方での資料調査などを断念せざるを得なかったものの、パリ市内の研究機関で未確認分の資料の調査を遂行するとともにプルーストのゴンクール賞受賞100周年を記念する各種の講演やセミナーに参加し、これまでの考察を補強する様々な知見を得ることができた。プルーストの青年期以降の音楽受容の過程と初期のテクストから『失われた時を求めて』までを考察したことで、作品の外部に実在する音楽レフェランス群の小説への取り込み方の変化が浮き彫りとなった。作家自身の音楽体験がテクストの記述にそのまま反映されるという単純な図式を回避しつつ、実在の音楽レフェランスとテクストの関係は、ヴァントゥイユの音楽をめぐる記述において一層複雑化する。音楽レフェランスの精査を通じて、プルーストの実人生における音楽体験と〈作家として音楽を書くこと〉との間にどのような繋がりと飛躍があるのか、その解明に迫る確かな道筋をつけることに成功したといえよう。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2020 2019 2018 2017
All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 2 results) Presentation (3 results) Book (1 results)
言語社会
Volume: 12 Pages: 342-322
10.15057/29159
120006460349
Etudes de langue et litterature francaises
Volume: 113 Issue: 0 Pages: 369-381
10.20634/ellf.113.0_369
130007488089