エミール・ゾラおよび永井荷風の音楽傾倒に関する比較文芸論的考察
Project/Area Number |
17J05089
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Literature in general
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
林 信蔵 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2017)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2017: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 音楽愛好家の文学 / オペラ共作 / エミール・ゾラ / 永井荷風 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、受入研究者との研究の展望に関する意見交換を経た後、エミール・ゾラと永井荷風の音楽傾倒に関する比較文芸論的考察というテーマに関して、以下のような研究を実施した。 まず、2017年の研究では、前年度東京芸術大学大学院音楽研究科に提出した博士論文『小説家の領分:エミール・ゾラとアルフレッド・ブリュノーのオペラ共作をめぐって』の内容を再検討し、研究が不十分であった点、異なる展開が可能な点などを洗い直す作業を行った。その結果、以下のような観点を得た。 1、東京芸術大学大学院音楽研究科に提出した博士論文では、エミール・ゾラとアルフレッド・ブリュノーとのオペラ共作の諸相に光をあてることに成功したが、オペラ共作体験がゾラの後期文学作品にもたらした諸傾向に関しては、研究の方向性を異にするために示唆するにとどめた。 2、同博士論文では、ゾラのオペラ台本がフランスのオペラ史にもたらした創造性というテーマを扱ったが、ゾラがもたらしたオペラ史上の革新性は、先行する作品の分析と対照する形で示した。この点に関する考察をより立体的に行うために、19世紀においてパリ音楽院において実施されていたオペラ作曲教育の諸相について踏み込む必要があった。 また、2017年の研究では、2018年度以降の研究を円滑に行うため、荷風の音楽傾倒に関しての研究を実行するための予備的な調査が必要であった。以上のように課題を明確にした上で、諸種の研究を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず、2017年度の研究では、ゾラの後期作品『豊穣』において現れるゾラの多産のイデオロギーや理想のフランス像をヴァーグナーの美学に対抗する芸術的営為の一つとして解釈することで、オペラ共作と共通する意図がゾラの後期文学作品にも見て取れることを明らかにした。なお、この研究内容は、日本比較文学会第53回関西大会において口頭発表した。 また、19世紀パリ音楽院におけるオペラ作曲教育の諸相に関しては、夏季休暇中にフランス国立図書館(本館、オペラ座図書館、音楽部門)における調査を行った。特に、Art du composition dramatique ou cours complet de composition vocale, par Antoine Reicha, Paris, 1833やTraite; de composition par Emile Durand, Alphonse Leduc, 1899(文字化け防止のためアクセント記号を省略した)といった資料の発見が、今後の研究に明確な方向性を見出す契機となった。 一方、荷風の音楽傾倒の研究に関しては、荷風が菅原明朗と行った浅草オペラ《葛飾情話》共作に関する研究として、東京芸術大学図書館と国立国会図書館東京本館における2度の調査において、基礎的資料の収集を行った。これらの成果は、来年度以降の研究において発展させていく予定である。 また、立命館大学国際言語文化研究所2017年度萌芽的プロジェクト研究会「アジアにおける技術・芸術と社会のダイナミクス」に参加することで、荷風の音楽愛好に関する研究成果を村上春樹の音楽傾倒と対照することで、従来の研究計画にはなかった論点を獲得することができた。この成果は、研究会において口頭発表した他、論文を『立命館言語文化研究』第30巻1号に投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、研究代表者の就職に伴う特別研究員辞退により2017年度で終了することとなるが、この研究課題遂行によって得た知見を、2018年度以降の研究に下記のように活用したいと考えている。 1、オペラ共作に現れるものと共通するゾラの後期作品の政治性についての研究では、日本比較文学会第53回関西大会において「エミール・ゾラの後期作品の政治性:ヴァーグナー受容の観点から」と題して口頭発表した内容を更に改良し、その成果を論文および執筆計画中の単著において公表することを目指す。 2、19世紀パリ音楽院において実施されていたオペラ作曲教育の諸相に関する研究では、さらに分析・考察を進め、その成果を口頭発表・論文および執筆計画中の単著において公表することを目指す。 3、荷風と菅原明朗による《葛飾情話》共作をめぐる研究に関しては、荷風による映画台本『浅草交響曲』とも関連付けながら論文としてまとめ公表する。 4、ゾラ、荷風、そして今年度から着手した村上春樹における音楽傾倒に関する研究では、研究代表者の従来の研究成果を総括した上で、文学者の音楽愛好の意味をより包括的に考察すべく、「音楽愛好家の世界文学」という視点から研究成果をまとめ、ゾラの音楽傾倒に関する単著とは別に刊行することを目指したい。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)