Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
CD26に基づく難治性糸球体腎炎の治療応用への基礎的研究として平成19年度は下記の研究を行なった。CD26はT細胞受容体からのシグナル伝達を補助的に増強する共刺激分子の一つで、T細胞増殖活性に重要である。まず健常人末梢血T細胞を抗CD3単抗体及び抗CD26単抗体による共刺激後、トリチウムチミジンを用いて細胞増殖活性を測定した。抗CD3単抗体及び抗CD26単抗体による共刺激は抗CD3単抗体及び抗CD28単抗体による共刺激と同程度の増殖活性を認めた。次に健常人末梢血T細胞における抗CD3単抗体及び抗CD26単抗体による共刺激に対するT細胞表面へのlipid raftの発現量をフローサイトメータにて解析した。その結果、共刺激後、24時間後、48時間後、72時間後と経時的にT細胞表面へのlipidraftの発現量の増加が認められた。以上のことから末梢血T細胞において、lipid raftの発現量は共刺激による増殖活性に伴い増加することがわかった。現在、難治性糸球体腎炎の治療に対して副腎皮質ステロイド薬やシクロスポリン等の免疫抑制剤が使用されている。健常人末梢血T細胞を副腎皮質ステロイド(デキサメサゾン)またはシクロスポリン存在下で抗CD3単抗体及び抗CD26単抗体による共刺激後、トリチウムチミジンを用いて細胞増殖活性を測定した。各免疫抑制剤ともある値以上の濃度が存在した場合、末梢血T細胞の増殖活性を抑制した。同時にフローサイトメータにて測定した末梢血T細胞上のlipid raftの発現量も低下していた。以上の結果より、末梢血T細胞においてその増殖活性及び免疫抑制効果を評価する際、T細胞表面のlipidraftの発現量をフローサイトメータにて測定することで代用することが可能であることがわかった。