Outline of Annual Research Achievements |
学術雑誌の電子ジャーナル(EJ)化により, その利用統計が容易に入手可能となり, 学術雑誌利用傾向の分析が可能になってきている。EJ利用統計は, ビッグディール解除後の個別タイトル選定等で活用されるべきであるが, EJ利用統計や引用論文データ, Journal Impact Factor(JIF)等との相関が明らかにされていないため, これらの情報を総合的に活用しきれていない。そこで本研究課題では, これらの数値データ間の関係について検討を行った。 比較用の数値データは, 明治大学のElsevier社・ScienceDirect(SD)利用統計(2012年~2016年), 明治大学所属者が2012年から2016年に発表した論文の引用論文データ(Web of Science及びScopusから抽出), JIF2017, ScopusのCiteScore2017を用いた。これらを比較した結果, 明治大学所属者が参考文献として取り上げた雑誌(引用雑誌)とJIFでは, 弱い正の相関(相関係数0.23)がみられ, 引用数の多い雑誌上位50誌に限ると中程度の正の相関(相関係数0.52)があった。同様に引用雑誌とCiteSocreでは弱い正の相関(相関係数0.19)があり, 引用数の多い雑誌上位50誌に限れば中程度の相関(0.34)があった。しかしJIF, CiteScoreともに, 引用数下位の雑誌では逆に負の相関がみられる結果となった。SD利用統計と引用雑誌の比較では, 強い正の相関(相関係数0.74)がみられた。またJIFやCiteScoreとSD利用統計との比較では, 相関が無い(それぞれ相関係数0.16と0.19)結果となり, JIFやCiteScoreが高い雑誌といえども必ずしも頻繁に利用されるとは限らない結果となった。 以上より, 図書館で契約するEJの個別タイトル選定には, JIFやSiteScoreといった雑誌評価指標の数値だけを頼りにすることは, 実際のEJ利用の予測を誤る可能性があり, 所属者が発表する論文の参考文献掲載誌に重きを置いて選定することがより重要であることがわかった。 今後は研究分野を分けた数値データとの比較や, スピアマンの順位相関による比較・検討を行う予定である。
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