Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は, 大学生における心理の専門家に対する援助要請行動を促進する方法を検討することである。初めに, 大学生のメンタルヘルスの改善に向けた予防的視点から, 大学生が学生生活において抱える問題を明らかにするための質問紙調査(N=1775)を行った結果を分析した。その結果, 学生相談を活用しない学生の中には, 抑うつや不安に加えて, 学生生活に対する困難さを抱えている学生が一定数存在することが示された。次に, 大学生の援助要請行動を阻害する要因を検討するための質問紙調査を行った(N=177)。分析の結果, 心理的非柔軟性が, 心理の専門家への相談に対する偏見に影響を与えていることが示された。これらのことから, 従来の対処行動や思考パターンに固執することが, 援助要請行動を阻害している可能性が考えられた。以上の調査結果を踏まえ, パイロットスタディとして, 心理的非柔軟性の改善を主軸とした心理教育プログラムを立案した。本プログラムは, 認知行動療法のアプローチの一つとなるアクセプタンス&コミットメントセラピーを取り入れた, 1回60分で行う3日間の小集団プログラムとした。実施時には, 取り扱う内容の説明を行った後, エクササイズを用いた体験的な内容になるように構成し, 最後に感想をシェアする形式で統一した。実施後の結果では, 実験群(N=7)は統制群(N=7)に比べて心理的柔軟性が高まり, 先延ばし行動が改善された。以上の結果から, 心理的柔軟性を高める介入プログラムを行うことは, 新たな行動レパートリーを増やし, 援助要請行動を促進させる効果が期待できるものと推察された。
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