Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】 自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorders : ASD)の特性を把握する手段は, まだ十分とはいえない. 私はグッドイナフ人物画知能検査新版(Goodenough draw-a-man intelligence test : DAM)に着目し, ASDを診断する際の重要な手掛かりとなりうるかを検証した. 児童期ASD児と定型発達児のDAMIQおよびDAM評価項目の通過率を比較し, ASD診断の指標としての有用性を検討した. 【研究方法】 対象は愛媛大学医学部附属病院子どものこころセンターを受診した知的障害を伴わない小学生ASD児をASD群、公立小学校通常学級に在籍する定型発達児をコントロール群として, 個別に人物画テストを行った. コントロール群に関しては, 保護者に精神科受診歴の有無を聴取し, 神経発達障害児の除外のために児童用AQ(Autism-Spectrum Quotient), ADHD-RS(ADHD Rating Scale-IV)への記入を依頼した. 両群のDAMIQおよびDAMの評価項目の通過率を算出して, 2群間比較を行った. 【結果】 ASD群は38名(M:F=28:10, 平均8.89±1.67歳), 対象群は187名(M:F=73:114, 平均9.04±1.67歳)であった. 低学年(小学1-3年)と高学年(小学4-6年)でASD群とコントロール群のDAMIQを比較したところ, 低学年では有意差を認めたが, 高学年では有意差はなかった(低学年ASD群v.s.コントロール群 : 89.6±15.2v.s. 105.6±15.6, p<0.001). DAM評価項目の通過率においては, 低学年では11項目(頭の輪郭, 顎と額, 毛髪(A), 首, 腕と脚のつき方(A, B), 指の数, 掌, 衣服2以上, 衣服の全部, 描線(B)), 高学年では3項目(眼, 首, 足の割合)に有意差が認められた. 【考察】 本研究では, DAMIQ, 通過率ともに有意な差が認められ, 特に低学年においてASD診断のための指標となりうる可能性が示された. 今後は, ASD群の症例数を増やして男女別に検討すること, また個人の学力や環境を踏まえた比較等を行うことが課題である.
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