Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 数学科で育成されるべき考え方・思考法という視点から中学校における授業を再考し, 新たな授業のあり方を提示し, それに準ずる授業開発を行うことを目的とする。その中でも, 中学校1年生において行われる作図活動とその記述に焦点を当てることで, 証明の授業開発への示唆を与えることを主目的として遂行する。 証明に向けた作図授業の構築に向けて理論的基盤として, 岡崎, 岩崎(2003), 平成29年度奨励研究(課題番号17H00146)の成果をもとに, 作図と証明を関連付けるための手法を再検討し, 今日的な作図授業, 証明の授業のあり方の考察を行った。また作図や証明に関する研究授業や先行研究の考察, 学会などへの参加, 研究協力者からの助言を通して知見を得た。そのもとで授業設計を行い, 3時間の授業実践を行った。授業では, 作図における道具(コンパス, 定規)の役割を規定し, 与えられた条件を満たす図形の作図を行い, その説明を記述, その記述を自ら評価し, 点数化する活動を行った。その結果中学校1年生の作図授業を証明につなげる際に, 困難となる点として, 中学生の感覚的操作が論理を伴った操作や記述につながりにくいという「作図と記述における子どもの不連続性の問題」があることが示唆された。その問題の原因として, 授業を進める上で, 子どもが具体的な操作を行うため, 記述の評価の際に, 評価がこれまでの算数・数学で培ってきた個々の感性・感覚に頼ったものとなってしまい, 自己の評価が非常に曖昧なものになる傾向があることが考えられる。この点が, 作図と今後行われる厳密な証明との乖離をもたらしている原因であると考える。この点を解決することが証明の授業の理解に大きく貢献すると考える。ここで得られた課題に対する考察を今後行う予定である。
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