Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は, 重複障害児の図工・美術科における表現する力の育成に資する, 表現活動の質的な深まりを示す長期的ルーブリック=教科ルーブリックの開発である。ルーブリックは, 成功の度合いを示す3~5段階程度の尺度と, 各尺度に見られる認識や行為の質的特徴を示した記述語から成る評価基準表と定義される。 最初に, 重複障害児の図工・美術科指導にあたる教員による, 児童生徒の表現活動を見取り解釈した記述を文書データとして収集した。具体的には, 全国211校の肢体不自由特別支援学校に質問紙調査を実施して得た評価に関する自由記述回答や報告者による実践報告と指導記録, X特別支援学校の図工および美術科における通知表の評価記述である。次に, 文書データに対する定性的コーディングによってルーブリックの観点を明らかにするとともに、継続的比較法に基づく分析を行う中でパフォーマンスの質的な転換点(レベル区分)を見出すことで, 教科ルーブリックの素案を得た。 教科ルーブリックの縦軸である観点は, 制作活動に関する〈主題の創出〉と〈主題の表出〉, 鑑賞活動に関する〈価値の創出〉と〈価値の表出〉で構成された。そのうち, 制作活動に関する観点〈主題の表出〉は, 下位観点〈制作の方法や手順の工夫〉〈材料や用具の駆使〉〈色や形の駆使〉〈他者との協働〉で構成された。一方, 教科ルーブリックの横軸であるパフォーマンスの質的な深まり(評価基準)として, 1 : リソース(表現活動に関わる物的・概念的資源)を受け入れている, 2 : リソースに関わっている, 3 : リソースの特性を把握し, 題材の内容(やること, 描く/作るものなど)に応じた扱いをしている, 4 : 題材のテーマ(表すこと)に応じた主題をもち, それに基づいてリソースを活用している, 5 : 活動や結果を振り返り, 主題を更新したり, リソースの活用の仕方を改善したりしているが, それぞれ明らかになった。
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