Outline of Annual Research Achievements |
本研究は, 数学の問題を拡張し, 自ら数学をつくっていこうとする生徒を育成するような, 中学校図形指導のための教材を開発することを目的としている。具体的には, 以下の課題に取り組んだ。 (1) ある問題を解決した後, 条件を変えて新たな問題について考える生徒の思考の特徴を明らかにする。 (2) 数時間または単元など, 数学の問題を拡張するような一連の教材を開発し, そのような教材を用いることの有用性を示す。 (2)については, 図形の問題を拡張するような題材を探す中で, ガリレオ・ガリレイの『新科学対話(下)』に記載されている, 定理六の逆を扱うことを考えた。この命題の証明には定理三の系(高さが同じ斜面から物体が降下する時間は斜面の長さに比例する)が利用されている。しかし, これを中学校のカリキュラム内でそのまま実施することは難しい。したがって, 定理三の系は第1学年の比例で, また, 物体が降下する距離が時間の二乗に比例することも第3学年の二乗に比例する関数で, それぞれ実験的に扱い, 公理的に認め, 定理六の逆を第3学年の相似で証明することとした。そうすれば, 中学校のカリキュラム内で学年・単元をまたいだ教材になると考えた。本年度は, 上記のうち第1学年の部分のみ実施した。これについては, 本校公開研究会にて授業を公開し協議を行った。 また, 別の課題として, 回転移動の合成を拡張しらせん相似にしたらどうなるかという課題について, 教材研究を行った。これについては, 論文の投稿等での発表に至っていないため, 教材研究の成果をまとめ, 発表することが今後の課題である。 (1)については, 上述の公開研究会にて発表した授業について, 授業プロトコル及び, 抽出生徒の問題解決の記録を作成し, 所属校の研究紀要に掲載した。この授業とその後数時間の授業を実施し, 比例の性質に照らして, 定理三の系が成り立つことを生徒が認めるに至った。第3学年において, この授業を行った生徒に対して定理六の逆の証明を行うところまで実施し, 第1学年でとった記録とも照らし合わせて, 生徒の思考がどのように進展していくかを考察することが今後の課題である。
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