Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は, 学習者の体験不足を小型コンピュータで補い, STEAM探究学習による物理概念理解の効果測定である。 方法は, プロジェクト学習としてSTEAM的導入「自動車産業諸課題の解決」2校時分の授業後, 身体動作を伴うデザイン体験とセンサを介した概念理解を調査した。1校時目はエンジンの性能向上を高校段階の物理としてP-Vグラフ上の熱効率デザインへ, 2校時目は自動運転における位置・変位・速度の測定へと具体的作業に落とし込み, 先進技術において基本的な加速度と力の概念が重要であるという理解に導いた。次に概念把握のため身体動作を伴う2つの調査課題で, 造形デザイン手法と加速度センサ搭載マイコンを利用。デザイン体験と身体経験の有無を対照した4群を分析し, STEAMで重視されるデザイン思考とセンサの有効性を評価した。 調査1 実験書『いきいき物理わくわく実験3』所収のブロック積みを, 本調査では質量2.5kgの直方体レンガ5個を片手で持ち上げる組み方の検討とし, 回答の描画を分類した。重心位置に関して立体思考が必要となる課題で, 質量非経験群に実現不可の回答が目立ち, STEAM手法を援用したレゴブロック造形体験群では立体表現が促進された。 調査2 教科書所収の円筒と糸, おもりからなる装置で, 等速円運動する力の向きに関して身体経験だけでは誤概念を克服せず, むしろ経験群がより誤りに導かれた。しかし, おもりに代えて3軸加速度センサを円運動させる実験群では, 加速度の向きを意識する生徒が増え, 有効性が認められた。 円運動させるにはロボット教材のセンサは高価かつ重量超過で, 実測23gのマイクロビットがウェアラブルかつ安価で適した。本研究ではノートPCで予めプログラミングし, 探究に応じて異なる挙動を実行できる実用性も確認したが, 現在公開のスマートフォン用アプリなら課外でも個々にプログラムを改良し, 学習者自身が概念把握の目的でセンサ活用装置を開発できる意義が大きい。
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