Outline of Annual Research Achievements |
研究目的 小学校第5学年「物の溶け方」を対象として, 『ものが水にとける』ことを図や絵を用いて表現するために有効な実験方法および単元展開を開発し, その有効性について児童の学習記録に基づき, 均一性概念の形成の観点から評価することを目的とする。 研究方法 ウラニンは, 粉末ではオレンジ色、水に溶かすと黄色を示すという特徴をもつ。ウラニンを水中に入れると, 筋を示しながら水中に拡散していく。この水中の黄色の筋は, ウラニンが拡散していく状態を可視化している。この後20分程度で全体に広がり, 均一に分散していく過程を追跡可能である。つまり, ウラニンを使用することで, ものの形が見えなくなるほど小さくなって液全体に広がることを短時間で, 従来よりも明確に可視化できる。 授業は, ウラニンを用いた学級(A群)と従来通り食塩を用いた学級(B群)で行う。授業で使用した学習カード中の溶質の広がり方に関する図や絵等の記述, 授業中に用いる言葉の変容を解析することで, 児童の発達にあった単元展開およびウラニンの有効性について整理・評価する。 研究成果 B群児童の学習カードから, 食塩の溶解を観察することで, 対流現象に着目する児童が多く, 誤概念を形成してしまうことが示された。しかしながら, この誤概念は, ウラニンの溶解を観察することで修正される。A群児童の学習カードから, ウラニンを用いることで, 均一性について理解することができること, および, 対流現象に着目しなくなることが示された。以上のことから, 溶けている物が均一に広がることにも触れるためには, 蛍光色素を用いることが有効であることが示された。また, 食塩のような, 溶液が無色透明である物質を用いて均一性について学習することは困難であり, 誤概念を形成してしまうこと恐れがあることが示唆され, 無色透明溶液を用いる際には, その前後で有色物質の溶解について触れておく必要があることが示された。
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