Outline of Annual Research Achievements |
○研究目的 : 本研究の目的は, 視覚障害児・者の口腔健康教育に使用できる歯列模型の開発と, その実用性を検証することである. 視覚障害のある人は, 歯ならび・汚れの溜りやすい場所や歯ブラシのあて方などを視覚的に確認できず, 効果的なブラッシング方法を身につけることが困難であるが, 現在歯科保健教育において, 視覚障害児・者が触知しやすい模型がない. そこで平成27年度より, 2倍大の歯模型をマグネット着脱式にした, 歯の数や歯ならびを対象者の口腔内にあわせて自由に配置できる模型の開発を行なっている. 本研究課題では, さらに模型の実用性を高めるため, 視覚障害当事者や歯科医療関係者からの評価による, 模型の実用性の検証と, 実用化に向けた課題の改良を行なうこととした. ○研究方法 : マグネット付き2倍大歯模型(乳歯・永久歯・萌出途中の永久歯・傾斜歯), 排列用顎堤(歯ぐき)模型, 咬み合わせ装置等を作製したのち, 視覚障害当事者と歯科医療関係者に使用してもらい, 模型を使用した際の対象者の理解度について, 双方にアンケートを行なった. また歯科医療従事者へのアンケートより模型の課題を明らかにし, 問題点について改良を行なった. ○研究成果 : 模型を使用する事で, 視覚障害当事者の, 歯ならびの状態や歯ブラシ等のあて方などの理解に有効であること, また視覚障害のない人への説明にも応用できることが分かった. またアンケートから明らかになった模型の課題について改良を行なったことで, 歯ならびの再現性や模型の操作性等が改善された. 今後実用化に向けて, 視覚障害児・者に対する口腔保健教育の現場での更なる検証と改良の必要があると考えられるが, 本模型は視覚障害児・者を対象とした口腔保健教育のツールとしてだけでなく, その他の障害等により説明に配慮が必要な人への応用など, ユニバーサルデザインとして視覚障害のない人へも幅広く活用できると考えている.
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