Outline of Annual Research Achievements |
○目的 : X線回折法を用いた分析や解析を行うにあたり、回折パターンに含まれる情報を理解することは重要である。回折パターンの各ピークは反射指数hkl(h, k, lはそれぞれ整数)で帰属され、グラフ横軸の反射角度(2θ)は格子定数の情報を、縦軸の反射強度は構成元素の座標や種類の情報を含んでいる。初学者にとって、これらの情報を直感的に理解することは困難である。また、反射強度は結晶構造因子など多くの因子に依存し複雑であることから、独自に学習することは難易度が高い。ここで開発する実習システムは、コンピューターの表計算ソフトを用いてX線回折の反射強度比を算出シミュレーションするものであり、体験型の実習を通じて回折パターンに含まれる情報の理解を促すことを目的としている。 ○方法 : 研究室学生を対象として実習を行った。対象物質としてNiOやNaC1など立方晶系の単純な構造のものを用いた。手順として、まず反射指数hklを100, 110, 111, 200・・・とすべて列挙し、格子定数やX線波長、ブラッグの条件式などから反射角度(2θ)を求めた。次に、反射指数と原子座標データから結晶構造因子が0になる反射を消去し、消滅則を適応させた。そして、文献値から求めた原子散乱因子、温度因子、ローレンツ・偏向因子、多重度因子を段階的に適応させて最終的な強度比を算出し、実測データや文献値との比較を行った。 ○成果 : 計算と同時にグラフを作成させて、各種因子の適応段階によって強度比がどのように変化するかを認識させた。また格子定数が変化することでピーク位置がシフトし、構成元素が変化することで強度比も変化することを確認させた。実習後のアンケートでは、よく理解できたと評価を得た。このように体験型の実習に加え視覚的に変化を認識させることで理解が促進され、実習システムの教育効果を確認した。
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