Outline of Annual Research Achievements |
本年は公立高等学校に教員として勤務しながら, 京都大学数理解析研究所の長期研究員として過ごすことができ, 豊かな研究機会に触れることができた. 本年の研究課題について, 1) 通常授業・生徒の支援, 2) 成果の普及・関連研究に分けて述べる. 1) 通常授業・生徒の支援 数学史や純粋数学の中に出てくるトピックスや概念を紹介し, 各分野における本質的な部分を感じ取ることのできる授業を試みた. 数学内容の重要性を意識した授業展開を行うだけではなく, 引き続き, 協働的学び合いを実践しつつ各分野の履修後に「問題作り」を行った. 筆者の扱う問題作りは, 生徒が日常や自然と数学がいかに関わっているかを感じ取ることや楽しみの育成を意識している. さらに生徒に評価者としての立場ももたせ, 広範で深い学びに繋がる思考と, 評価者の視点をもつ生徒の育成を試みた. また「理想の結婚式」と題して数学ではなかなか扱うことのない“感性”に焦点を当てた授業を実施した. 生徒は自ずと指標を設け, 確率論や統計的手法を用いてアプローチしており, この実践は筆者に高等学校教育における数学の可能性を示唆するものとなった. SSH事業に携わり, SS科学部や課題研究で数学の研究内容をもつ生徒を指導し, 生徒はマスフェスタ等で発表した. また数学オリンピックや科学の甲子園参加者の指導も行い, 発展的な学習の支援を行った. 2) 成果の普及・関連研究 ICM(RIO)における数学教育の分科会で問題作りについてポスター発表し, 反響を得た. また, 様々な数学に出会うとともに数学者と交流できたことは, 数学の広さを感じ取るのに十分な刺激となった. 日本数学教育学会秋季大会で尋常小学算術における問題づくりについて口頭発表した. 次期学習指導要領についての考察も引き続き行い, 「平成30年版学習指導要領改訂のポイント高等学校数学」, で共著出版された. 確率論史については, ポール・レヴィや伊藤清, 飛田武幸の確率論について数理解析研究所の蔵書を中心に調査し, 数理解析研究所研究集会「数学史の研究」と津田塾大学「数学史シンポジウム」で口頭発表した. 確率論全般については, 引き続き論文や著作物を読み研鑽を積んでいる.
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