Outline of Annual Research Achievements |
関東山地三波川帯分布域である埼玉県長瀞町本野上の荒川河床には, 変成度の異なるユニットが断層で接する露頭が存在する. 本研究はこのようなユニット境界に見られる変形構造を解析し, その運動像の実例を得ることを目的として実施した. また, この露頭は露出良好の上アクセスも容易であり, 変形構造の観察・学習場所としても適するため, 自然科学データ採取法の習得, 各種地質構造データの解析を通した空間認識能力の涵養のための教材開発も行った. まず, 露頭においてユニットごとの片理面・鉱物線構造, ユニット境界の断層面・複合面構造・条線等の姿勢を多数測定した. また, 定方位試料の採取を行い, 偏光顕微鏡を用いて鉱物組み合わせや変形微細構造の解析を行った. その結果, 上盤ユニットは低変成度(緑泥石帯), 下盤ユニットは高変成度(ざくろ石帯, 一部黒雲母帯)の岩石からなり, 境界断層に沿って厚さ1~1.5mのカタクレーサイト帯が発達すること, 上盤ユニット・下盤ユニット・カタクレーサイト帯ともに1つのアンチフォームをなすこと, 下盤ユニットおよびカタクレーサイト帯は上盤東の剪断センスを示すことがわかった. これらの成果を詳細な露頭図にまとめ, 地学教育の教材として活用するため, 研究代表者が担当する選択「地学」の授業において, 地層と地質構造, 地質図の読み方と書き方, 構造要素のステレオ投影法, コンターダイアグラムとπダイアグラムなどの学習を行なった後に, 調査地点の露頭における野外実習を実施した. 実習では露頭図と見比べながら岩相および変形構造の観察・面構造の測定等を行わせ, 構造要素のステレオ投影とコンターダイアグラムを作成させてアンチフォーム構造の姿勢を求める課題を実施した. 野外実習を実施したことにより, 平面情報と空間情報の対応がスムーズに行える生徒が増え, 一定の効果が認められた.
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