Outline of Annual Research Achievements |
研究目的 : 危険ドラッグ、向精神薬、麻薬の中には、化学構造内のベンゼン環に付く置換基の位置の違いにより位置異性体が存在するカチノン系薬物等が有り、その違いにより法規制が異なる。乱用者の尿からそれら薬物が検出された場合、その薬物が法に触れるのか、触れるとすればどの法規制対象なのか判別しなければならない。現在、主流となっている位置異性体識別法は、クロマトグラム上で位置異性体を分離し、標準品と保持時間を照らし合わせ判別が行われているが、クロマトグラフィーによる分離カラムの選択等分析条件の検討が煩雑である。そこで、置換基効果を利用したベンゼン環への臭素付加の違いにより、尿中の位置異性体を迅速に判別できないか検討を行った。また、位置異性体を識別できる尿中濃度についても検討した。 研究方法 : 位置異性体標準品添加尿0.1mLをシリコン不活性化処理バイアルに入れ、窒素気流下完全乾固する。触媒臭化鉄(Ⅲ)と液体臭素を加えバイアルをキャップで封をし、氷水中で10分間臭素化反応させる。反応後、バイアル内の余分な臭素を窒素ガスで置換し捕集する。キャップを外し、飽和炭酸ナトリウム液を加え、n-ヘキサンを加え抽出する。遠心分離した後ヘキサン層を分取し、窒素気流下乾固して0.1%ギ酸で再溶解し、液体クロマトグラフ四重極飛行時間型質量分析装置で分析を行う。 研究成果 : 位置異性体3,4-Methylendioxy pyrovalerone(MDPV)と2,3-MDPVを尿にそれぞれ添加し、識別検討を行った。粉末試料の場合と同様に、尿中の同2種の識別は、ベンゼン環に臭素が1つ付加した化合物の生成の有無(3,4-MDPVのみ生成)により判別が可能であった。3,4-MDPVでは、ベンゼン環に臭素が1つ付加した化合物(1 Br体)が複数個ピークとして検出されるが、2,3-MDPVでは全く検出しなかった(n=3)。臭素がベンゼン環に2つ付加した2Br体及び3つ付加した3Br体は両化合物とも検出した。尿量を増やす・尿中の目的化合物を抽出して臭素化すれば尿中識別濃度はng/mLオーダーまで可能である。
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