Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】せん妄は、見当識障害に加え幻視・幻覚などを特徴とする状態を示し、基礎疾患への影響、死亡率の増加、介護・看護者への負担が臨床上大きな問題となる。申請者らは、炎症物質であるリポ多糖(LPS)投与による全身炎症マウスを用いてペントバルビタール誘発睡眠試験を行ったところ、炎症によりベンゾジアゼピン(BZ)作動薬の感受性が亢進していることを明らかにした。そこで本研究では、炎症病態におけるBZ作動薬の感受性亢進の機序解明を目的に、LPS投与炎症モデルでのGABA_A受容体サブユニットの発現変化について検討を行った。 【研究方法】ICR系雄性マウスを用いて、LPS(300μg/kg, i.p.)投与により全身炎症病態を引き起こす。次にLPS投与0-24時間後の海馬および前頭皮質のGABA_A受容体サブユニットの発現量をreal-time RT-PCR法によって評価を行う。GABA_A受容体サブユニットのα1, 2および5に関して定量的評価を行った。 【研究成果】LPS投与1時間後に海馬GABA_A受容体サブユニットα1, 2のmRNAが低下した。LPS投与24時間後ではどのサブユニットのmRNAは変化なかった。 急性炎症時に一過性のmRNAの低下がみられたものの、行動学的評価によってBZ作動薬の感受性亢進がみられた投与24時間後ではmRNAの変化は認められなかった。本検討では、BZ作動薬の感受性亢進のメカニズムを明かにすることが出来なかった。今後、シナプス間隙におけるGABAの変動などの定量を含めたGABAの代謝機構についてあわせて検討を行っていく予定である。
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