Outline of Annual Research Achievements |
本研究では予備検討として, 認知症治療薬が投与された認知症患者35名について, 認知症治療薬(ドネペジル, ガランタミン, リバスチグミン, メマンチン)の投与量, 各種血液検査値(AST, ALT, 血清クレアチニン値, BuChE), 活性生菌製剤(ラクトミン, 酪酸菌, 糖化菌)併用の有無, 併用薬(活性生菌製剤以外), MMSEスコア, 消化器症状(悪心嘔吐, 下痢, 腹痛等)の有無をレトロスペクティブに調査した. その後, 活性生菌製剤併用の有無で患者を層別化し, 各項目別に両群で比較を行った. その結果, 活性生菌製剤併用群が10名, 非併用群が25名であった. 活性生菌製剤併用群では, 非併用群に比較し, 消化器症状の発現率が低い傾向であったものの, 有意な差は認められなかった. またghrelinの体内挙動に関わる血中BuChE濃度(BuChE活性)についても有意な差は認められなかった. 次に活性生菌製剤併用患者のうち, 消化器症状(悪心・嘔吐, 食欲低下)の発現を認めた患者1名について, 認知症治療薬(ドネペジル)投与開始後12週目に採血を行い, 血中acylghrelin(活性型)およびdesacylghrelin(非活性型)濃度を酵素免疫測定法により測定したところ, acylghrelin濃度は8.3pg/ml, deacylghrelin濃度は188.3pg/mlであった. 消化器症状を発現した患者1名については, 血中acylghrelinが健常成人(男性7名, 平均23.3pg/ml)に比較し低値であることから, 認知症治療薬による消化器症状の発現は血中acylghrelin濃度に部分的に関連し, 活性生菌製剤の効果の指標となる可能性が考えられた. しかしながら, 症例数が不十分であったため, さらに症例を集積し, 検討を行う予定である. 本研究結果は予備的な知見であるものの, 今後の認知症治療における支持療法の指針作成において有用な情報になると考えられる.
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