Outline of Annual Research Achievements |
近年の急速な高齢社会の進展に伴い, リハビリテーションに従事する理学療法士は急増している。効果的な理学療法教育の確立が急務とされており, 中でも動作観察の技術習得には時間を要することが多い。そこで, 本研究の目的は, (1)動作観察熟練者と動作観察初学者を対象に, 眼球運動計測装置を用いて動作観察における視線動向を比較検討すること, (2)動作観察初学者に対して, 動作観察熟練者の視線動向を示して教育することが, 言語情報を用いた教育と比較して効果的か, 検証することとした。 対象は, 動作観察熟練者として医療機関に勤務する理学療法士と, 動作観察初学者として理学療法士養成校学生を用いた。動作観察課題には, 理学療法対象患者の歩行動作を用い, 動作観察者は眼球運動計測装置を装着して動作を観察した。動作観察初学者に対する視線動向を用いた教育は, 動作観察熟練者の視線動向を課題動画上に示すことで行った。言語情報を用いた教育は, 動作観察方法について言葉で教示するとともに, 課題動画を視聴することで行った。 動作観察熟練者と動作観察初学者を対象に, 動作観察における視線動向を比較検討した結果, 動作観察熟練者は動作観察初学者と比較して, 注視点が停留する回数が有意に多く, それぞれの停留時間は有意に短かった。動作観察初学者を対象に, 動作観察習熟者の視線動向を用いた教育と, 言語情報を用いた教育を比較検討した結果, 両教育方法において有意な差は認められなかった。本研究課題の成果は, 理学療法を必要とする患者に対する効果的で効率的なリハビリテーションの発展へ向けた, 基礎的資料を提供することができるものと考える。
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