ガスクロマトグラフィー-赤外分光法を用いた覚せい剤の光学異性体識別
Project/Area Number |
18H00513
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
3240:Society medicine, nursing, and related fields
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Research Institution | 佐賀県警察本部刑事部科学捜査研究所 |
Principal Investigator |
内川 貴志 佐賀県警察本部刑事部科学捜査研究所, 警察職員
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Project Period (FY) |
2018
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2018)
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Budget Amount *help |
¥520,000 (Direct Cost: ¥520,000)
Fiscal Year 2018: ¥520,000 (Direct Cost: ¥520,000)
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Keywords | 覚せい剤 / 光学異性体 / GC-IR |
Outline of Annual Research Achievements |
覚せい剤(Methamphetamine : MA、Amphetamine : AP)にはそれぞれ光学異性体が存在するが、それらを正確に識別することは、適正な法執行において非常に重要である。しかし従来法は、クロマトグラム上のピークの保持時間差のみを利用したもので、分析毎に標準品との対照の必要性がある等、精度と運用面で問題があった。そこで本研究では、d体及びl体の覚せい剤を光学分割用誘導体化試薬と反応させ、ジアステレオマー化した覚せい剤誘導体化物を作製した後、これらをガスクトマトグラフィー-赤外分光法(GC-IR法)を用いて分析し、得られた結果(クロマトグラム上の保持時間差とIRスペクトル上の差異)を利用した高精度光学異性体識別を検討した。光学分割用誘導体化試薬は、(S)-(-)-2-Acetoxypropionylchloride ((S)-APC)、(S)-(-)-2-Methoxypropionylchloride ((S)-MPC)、(R)-(-)-a-Methoxy-a-(trifluoromethyl)phenylacetylchloride ((R)-MTPA)等13種類を準備し、覚せい剤の光学異性体識別における最適試薬の選定を行った。また分析機器にはSOLID PHASE GC-IRを使用した。 各誘導体化試薬別にMA及びAPの光学異性体の識別評価を行ったところ、MAでは(S)-APC若しくは(S)-MPCを反応試薬とした条件で、光学異性体間の識別が保持時間差、IRスペクトルの差異のいずれも良好であった。特に(S)-APCは、d体のみにIRスペクトル上の1093cm^<-1>付近に明確な吸収ピークが出現する特性を有しており識別試薬として最適であった。一方APでは(R)-MTPAが最も有効な誘導体化試薬であり、明確な光学異性体識別が可能であった。なお、MAで良好だった(S)-APCと(S)-MPCは、APではd体とl体での保持時間、IRスペクトルのいずれも差異が生じず識別は不可能であった。これは、MAの二級アミン結合に存在するメチル基による立体障害がAPでは生じないことが原因と推定された。 以上の結果より、覚せい剤をジアステレオマー化した後にGC-IRで測定する本手法は、MA及びAPによって誘導体化試薬を選択する必要性はあるが、覚せい剤の高精度な光学異性体識別が可能であることから、今後の有効な分析手段となり得ることが示唆された。
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Report
(1 results)
Research Products
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