Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】加齢に伴う筋肉量や筋力の低下を示す状態をサルコペニアと呼び, 転倒や寝たきりなどの虚弱の要因として重要である. 一方, 関節リウマチ患者(rheumatoid arthritis : 以下RA)では健常人と同じbody mass index(BMI)であっても筋量が少なく脂肪量が多いことが知られている. サルコペニアの発症には複数の原因が複雑に相互作用し引き起こされると考えられているが、主要な要因の一つに炎症が挙げられる. 本研究の目的は, RAが慢性炎症性疾患であることに着目し, サルコペニアと炎症性マーカーの関連性について検討を行うことである. 【研究方法】当院生理検査室に滑膜炎評価の目的として関節超音波検査の依頼があり, 直筆の署名による同意が得られたRA患者17名(平均年齢62.5±13.9歳)をRA群とし, 対象群としてRAや膠原病, 悪性腫瘍などを患っていない患者15名(平均年齢79.2±6.9歳)をコントロール群とした. サルコペニアの診断については, RA患者では関節の痛みや変形により歩行速度が正確に判定出来ない可能性があるため, 歩行速度を含まない日本肝臓学会が提唱するサルコペニア判定基準に従い分類した. なお, 介助なしに歩行やベッド等への移動動作が行えない患者や, Steinbrocker分類でclassⅢ以上の患者は本検討から除外した. 【研究成果】年齢はRA群に比しコントロール群において有意に高値であったが, BMIや生体インピーダンス法による骨格筋量について両群間に有意差は認められなかった. サルコペニア陽性率は, コントロール群26.7% (4/15), RA群64.7% (11/17)であり, RA群で有意に高率であった, また, 炎症性サイトカインの一つであるtumor necrosis factor-αはコントロール群のサルコペニア陽性例で4.84±6.04 pg/mL, サルコペニア陰性例で1.22±0.39 pg/mLであり, サルコペニア陽性例で有意に高値を示した(p<0.05). 一方, RA群については, サルコペニア陽性例4.19±10.13 pg/mL, サルコペニア陰性例2.07±2.25 pg/mLであったが統計学的有意差は認められなかった. 本研究では, RA患者ではサルコペニアの罹患率が高かった. また炎症性サイトカインがサルコペニア発生に関与している可能性が示唆され, 治療のtight controlは関節破壊だけでなくサルコペニアの予防にも重要であると考える.
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