Project/Area Number |
18H01241
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 15020:Experimental studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山口 敦史 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (70724805)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊永 英寿 東北大学, 電子光理学研究センター, 准教授 (00435645)
満田 和久 国立天文台, 先端技術センター, 特任教授 (80183961)
前畑 京介 帝京大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30190317)
滝本 美咲 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 核燃料サイクル工学研究所 放射線管理部, 技術・技能職 (40832316)
中村 圭佑 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 核燃料サイクル工学研究所 放射線管理部, 技術・技能職 (80705054)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥17,550,000 (Direct Cost: ¥13,500,000、Indirect Cost: ¥4,050,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2019: ¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2018: ¥7,800,000 (Direct Cost: ¥6,000,000、Indirect Cost: ¥1,800,000)
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Keywords | 原子核分光 / 原子時計 / ガンマ線分光 / カロリーメーター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、超高分解能ガンマ線検出器である超伝導転移端センサー(TES, Transition Edge Sensor)を用いて、ウラン233(U-233)がα崩壊してトリウム229(Th-229)に壊変する過程で放出されるエネルギー29 keVのガンマ線を精密に分光し、Th-229のアイソマー状態のエネルギーを精密に決定することを目指している. Th-229の原子核準位には、基底状態からエネルギーがわずか8.3 eVのところに準安定状態(アイソマー状態と呼ばれる)が存在する.8.3 eVは、波長に換算すると150 nmと真空紫外波長であり、レーザーが作成可能なエネルギーである.従ってTh-229の原子核は、この2つの準位間の遷移を使いレーザー分光できると考えられている.その応用として注目されているのが、この核遷移にレーザー周波数を安定化する周波数標準 : 原子核時計である.しかし2019年まで、アイソマー状態のエネルギーの報告値は3.5 eVから7.8 eVの範囲にちらばっており、互いにそれぞれの不確かさの範囲内で一致していなかった. 本研究では2019年、Th-229 アイソマー状態のエネルギーを8.30 (92) eV と実験的に決定した. 2020年度には、エネルギー分解能を向上させるための測定装置の性能改善を行い、測定を実施した.本年度(2021年度)は、改良した装置で得られたデータの解析を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、U-233がTh-229に崩壊する際に放出されるエネルギー29 keVのガンマ線スペクトルを精密に測定することで、Th-229アイソマー状態のエネルギー(8 eV程度)を測定することを目指している. 2019年、本研究では、アイソマー状態のエネルギーを8.30 (92) eV と決定し、その結果をPhysical Review Letters誌に発表した. 2019年から2020年にかけて、世界で他に2つのグループが異なる実験手法でアイソマー状態のエネルギーを測定し、すべの値が不確かさの範囲内で一致した. 2020年度には、さらに精度良くエネルギーを決定するために、エネルギー分解能の改善(スペクトル半値全幅36 eV → 20 eVに改善)、素子数の増強(前回の1ピクセルから3ピクセルへ増強)、U-233線源の強度の増強(前回の5倍に増強)といった測定装置の性能改善を行った.今年度(2021年度)は、この改良した装置で得られたデータの解析を行った. データ解析の結果、観測対象であるTh-229 のエネルギー29 keVのガンマ線スペクトルが観測されていることは確認された.一方で、エネルギー較正用ピークとして同時に取得していたアメリシウム241のエネルギー26 keVのピークが、想定していたほど十分な強度で観測されていなかったことが判明した.そこで、代わりのエネルギー較正ピークとして、測定素子の近くに配置したリン青銅製のコリメータから発生したスズ(Sn)が起因のエネルギー28 keVの特性X線を使用することにし、データ解析を継続中である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では2019年度、Th-229アイソマー状態のエネルギーを8.30(0.92) eVと決定した.そして2020年度、Th-229のアイソマー状態のエネルギーを精度良く決定するため、TES素子のエネルギー分解能の改善・ピクセル数の増強・線源強度の増強を行い、新たな測定を行い、今年度そのデータ解析を開始した.今後は、新たなエネルギー較正方法を使用して、これらのデータ解析をすすめ、エネルギー29 keVガンマ線の絶対エネルギー決定における系統不確かさを低減することをめざす. また、この測定対象のエネルギー29 keVのピークは、エネルギー8.3 eVの幅(アイソマー状態のエネルギーの幅)で2つに分裂しているダブルピークである(前回の測定では、測定装置の分解能が36 eVだったため、この分裂が見えていなかった).これは、トリウム229の第2励起状態(エネルギー29 keV)からは、基底状態とアイソマー状態の両方に崩壊するからである.今後は、観測されたエネルギー29 keVピークの形状を精密に評価し、ダブルピークの分裂幅からTh-229のアイソマー状態のエネルギーを決定することもめざす.
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