Project/Area Number |
18J21178
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Veterinary medical science
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
永田 矩之 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2020)
|
Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2020: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2019: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2018: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
|
Keywords | 炎症性腸疾患 / ミニチュア・ダックスフント / エクソーム解析 / 疾患感受性遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、症例対照研究を行い、PLG遺伝子を犬の炎症性結直腸ポリープ疾患感受性遺伝子の一つとして選定した。罹患したミニチュア・ダックスフント(症例群)と罹患していないミニチュア・ダックスフント(対照群)の血液からDNAを抽出し、これまでの研究で選定した候補遺伝子の変異領域をPCR法で増幅した後にシーケンス解析を行った。その結果、PLG 遺伝子に認められたミスセンス変異(c.478A>T p.Asn160Tyr)のアレル頻度が疾患群で有意に高く、炎症性結直腸ポリープ発症との関連が示唆された。PLG遺伝子は、セリンプロテアーゼの一つであるプラスミンの酵素前駆体、プラスミノーゲンをコードする遺伝子である。プラスミノーゲンおよびプラスミンは線溶系において主たる役割を果たしている一方で、炎症細胞の遊走、腫瘍細胞の浸潤ならびに炎症性サイトカインの産生に関与していることが明らかになっている。そこで、炎症性結直腸ポリープの病変局所におけるプラスミン活性をザイモグラフィーにより検討した結果、病変部のプラスミン活性はコントロールに比べて有意に上昇していた。以上の結果から、PLG遺伝子に認められた変異は、プラスミン活性を増大させることで炎症性結直腸ポリープ発症と関連する可能性が考えられた。 次に、PLG c.478A>T p.Asn160Tyrの病態における役割を明らかにするため、犬プラスミノーゲンの組換えタンパク質を作製した。犬PLG遺伝子をクローニングし、哺乳類細胞を用いてタンパク質を発現させた。発現させたタンパクを含む上清を用いてザイモグラフィーを行ったところ、プラスミン活性が確認され、今後の機能試験に使用できることを確認した。変異型に関しては、PCR法を用いたSite-directed mutagenesisによりc.478A>Tの変異を含むプラスミドを作製した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本疾患は単一遺伝子性疾患ではなく多因子性疾患であると考えられており、感受性遺伝子の同定は困難な可能性も考えられた。そのような状況の中で、疾患発症との関連を示唆する遺伝子を一つ選定できたことは大きな成果であると考えている。実際に本疾患の病変部においてプラスミンの活性が上昇していることも本年度中に確認することができた。遺伝子変異と疾患発症との関連を明らかにするためには機能的な解析が必要になるが、そのために必要な組換えタンパク質の作製についても順調に進んでいる。一方で、罹患犬の約半数はPLG遺伝子の変異を有していないことから、PLG遺伝子以外の感受性遺伝子の探索も必要と考えられる。以上の理由から、おおむね順調に進展していると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、炎症性結直腸ポリープとPLG遺伝子との関連性を詳細に検討するため、免疫組織化学を用いた解析および組換えタンパク質を用いた解析を行う予定である。免疫組織化学については、病変部におけるプラスミノーゲンの発現解析および局在解析を行う。また、野生型および変異型の組換えタンパク質のセリンプロテアーゼ活性をザイモグラフィーで比較するとともに、プラスミノーゲンレセプターを持つ細胞に対しての機能の違いを比較する。プラスミノーゲンレセプターは様々な細胞に発現していることが知られているが、その中でもプラスミンの刺激により炎症性サイトカインの発現が誘導されることが明らかになっている単球系の細胞を用いる予定である。 さらに、PLG遺伝子以外の疾患感受性遺伝子に関しても、引き続き探索を行う予定である。これらに関しては、エクソーム解析の結果からミニチュア・ダックスフントに特異的に認められた変異に注目するとともに、犬のSNPデータベースも参照して候補遺伝子を選定する予定である。
|