昆虫クチクラに複数体節をまたぐ「切取り線」を形成するメカニズム
Project/Area Number |
18K06243
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 44020:Developmental biology-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小嶋 徹也 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (80262153)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2021)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2018: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 昆虫 / クチクラ / 切取り線 / 囲蛹殻 / 羽化 / 脱皮 / Notch / Gld / thawb / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ショウジョウバエの羽化時に開裂する囲蛹殻の「切取り線」であるoperculum ridge (OR)について、Notchシグナルを中心に解析することで、昆虫に必須なクチクラの「切取り線」をつくる構造的・時間的・空間的なメカニズムの解明を目指している。 本年度は、これまでのデータに関する再実験を含めて、ORといくつかのクチクラ・タンパク質の局在を詳細に解析した。その結果、一部昨年度の結果とは異なる結果が得られたが、慎重な検証の結果、以下のことがわかってきた。 まず、epicuticleに局在するTbタンパク質とprocuticleに局在するObstEはOR領域で多く局在していること、epicuticleとprocuticleの境界領域に局在するCpr11AはOR領域で局在が消失すること、これらの局在はNotchシグナルによって制御されていることがわかった。さらに、今までORで消失すると思われていたキチン染色シグナルについて、超解像顕微鏡で観察したところ、超微細な繊維状の構造となっていることが明らかとなった。また、Notchシグナルの下流で働くGldの変異体では、これら3齢幼虫期のOR特異的な構造にはほとんど変化がないことも分かった。Gld変異体でORが開裂しない原因をさらに解析したところ、OR領域は蛹期になるとprocuticleに完全に隙間ができるのに対して、Gld変異体ではその隙間が作られないことがわかり、ORの構造やGldの機能について解像度の高い理解に至った。 昨年度は、コオロギでもGldが「切取り線」で活性化していることを突き止めたが、NotchのRNAiにより、「切取り線」が開裂せずに脱皮に失敗する個体が多数見られ、ORとNotchシグナルやGldとの関係が、進化的にも保存された重要なものである可能性がより高まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度までの結果の再検証を含めて、ORのクチクラ構造についてさらに詳細に解析した結果、これまでの結果に一部間違いがあることが判明し、それを正すことにも時間が割かれてしまったが、そのおかげでデータの信頼性は格段に高くなり、さらに超解像顕微鏡などの新しい手法を用いることで、これまで見えていなかった微細構造の発見にも至り、昨年度までよりも高解像度でOR特異的な構造について理解することができた。さらに、Notchシグナルの下流で働くGldについても、蛹期に入ってからのクチクラ構造の変化に重要であることなど、その機能的な意味についても明らかにでき、ORの構造やその形成に働く遺伝子についての理解をより一層深めることができた。 さらに、コオロギについても、Gldの活性化が起こっていることにとどまらず、実際にNotchシグナルが「切取り線」の正常な開裂に必要であることを示唆するデータも得られ、ショウジョウバエのOR形成メカニズムの進化的な保存性について、さらに迫ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、Serの発現制御についてはあまり研究を進めることができなかった。したがって、本年度は、Serの発現パターンを時空間的により詳細に観察することによって、その発現の変化とOR形成との係わりやSerの発現を制御するメカニズムを明らかにして、ORを形成する位置を決めるメカニズムに迫りたい。 また、古くから知られるORが開裂しない変異体であるtrapped (ted)について、これが機能のほとんど分かっていないthawb (thw)の変異体であることを2019年度に突き止めていたが、本年度は、この遺伝子がコードするタンパク質の局在やこの遺伝子の発現、NotchシグナルやGldとの関係などについても解析し、OR形成過程の全貌により迫りたい。 コオロギについては、Notchだけでなく、リガンドであるSerやGldについてもRNAiでの機能解析をするとともに、コオロギの「切取り線」の構造を解析して、ORとの類似性や相違点についても検証し、ショウジョウバエORとコオロギの「切取り線」の進化的関係について、さらに理解したい。
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Report
(4 results)
Research Products
(6 results)