Research Project
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
脂漏性皮膚炎は、全世界で2-3億人もの人々が罹患する慢性かつ難治性の皮膚疾患である。皮膚に常在するマラセチア属真菌が炎症を誘導し表皮肥厚をきたすと考えられているが、そのメカニズムは未解明である。そこで我々は、マラセチアの認識と表皮肥厚の両者を橋渡しする炎症のイニシエーターとして樹状細胞に着目し、世界で初めて脂漏性皮膚炎患者の毛包にCD1a+の樹状細胞が顕著に集積していることを見出した。今回、これらの樹状細胞が脂漏性皮膚炎発症にどのように関わっているかを明らかにするため、病変部皮膚に浸潤する炎症細胞について、免疫組織化学的手法を用いて正常皮膚と比較検討し、さらに電子顕微鏡観察を行い以下の成果を得た。1)脂漏性皮膚炎では、正常皮膚と比較して毛包上皮内と真皮にCD1a陽性樹状細胞が多数集積していた。特異マーカーの検討により集積している樹状細胞はランゲルハンス細胞と考えられた。毛包以外の上皮では差はなかった。2)脂漏性皮膚炎では、正常皮膚と比較して有意に真皮・表皮・毛包のマクロファージが浸潤していた。3)脂漏性皮膚炎の真皮でマクロファージは播種状に分布していたのに対し、ランゲルハンス細胞は毛包周囲に結節状に分布し細胞集団を形成していた。4)その細胞集団について電子顕微鏡観察を行うとランゲルハンス細胞とマクロファージ、リンパ球が接着していた。上記1)~4)は、脂漏性皮膚炎の病態において毛包が重要な役割を持ち、さらにランゲルハンス細胞が起点となり他の炎症細胞と情報交換を行っていることを示唆する重要な新知見である。